「高い高い」に大はしゃぎ
入店すると、広いカフェ内のあちこちで「授乳」が行われていた。専用テーブルに通されて順番にメニューを頼むスタイルなのかと思ったが、そうではない。「オギャー」「バブバブ」という声は特に聞こえず、普通の会話を楽しんだり、黙って子守歌を堪能したりしている赤ちゃんが多い。
「授乳したり、されたりしなきゃいけない決まりはありません。自由に癒やされてください」
おサルパパさんが説明していた通り、過ごし方は利用者次第のようだ。
記者もさっそく癒やしてもらおう。ママになってくれるのは「yacho-ヤチョウ」さんだ。「かわいいネコちゃんね~」と柔らかい口調で話しかけられ、満更でもない気分になる。
いざ授乳!
ちょっと、いや、大分恥ずかしい...。
他の人にどんな目で見られているのだろう。慌てて周囲を見渡したが、誰も記者は眼中にないようだった。他の利用者は、自分の相手に癒やされたり、癒やしたりするのに夢中だ。
また、視界にはパパやママの顔とほ乳瓶しか入らない。必然的に「相手(ママ・パパ)と自分」だけの空間になり、段々と周囲は気にならなくなる。気付けば、仕事の悩み相談をしていた。ヤチョウママは話を遮ったり否定したりせず、「そうなのね~」「うんうん、えらいね」と相づちを打ってくれ、とても話しやすい。気付けば数分しゃべり倒していた。
記者「すみません、一方的に悩みを聞かせる赤ちゃんで...」
ヤチョウママ「大丈夫ですよ。赤ちゃんは千差万別ですからね!このお店は木曜営業なので、『あと1日で休日ですね』と声をかけたら『シフトが入ってるから休みじゃないんだよ...』と、『シフト勤赤ちゃん』を落ち込ませてしまったことがあります。言葉選びには、いつも気をつけなければと思っています」
ヤチョウママと癒やしの時間を過ごした記者。打って変わって、おサルパパは「アクティブ授乳」がウリだそう。元気な男の子に大好評らしい。いったい何をしてくれるのだろう。記者は早くも授乳のとりこになっていた。
「高い高い」されると視界が一気に縦に伸び、笑顔のおサルパパ越しにカフェが見渡せた。記者は一切動かず、現実世界で座ったままだ。遊園地のアトラクションみたいで、クセになる!童心に返って、3回もせがんでしまった。他所ではなかなか体験できない。
さらに、おサルパパは子守歌まで歌ってくれた。いやいや、この年になって子守歌は...と思っていたが、夜遅いのも手伝って徐々に心地よく。「本当に眠ってしまう赤ちゃんもいますよ」とおサルパパ。「寝かしつけ」が上手なママ、パパもいるそうだ。