無名作家の新作が快進撃を続けている。逢坂冬馬 (あいさか・とうま)さんの『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)。なぜ、ソ連だけが第2次世界大戦で多くの女性兵士を前線に動員したのか、ということをテーマにした骨太の作品だ。
2021年8月、未発表のミステリーを対象とするアガサ・クリスティー大賞を受賞。11月17日に単行本として発売されると、1週間で5万部を突破し、すでに8刷。大手書店の文芸書ベストセラーのトップに躍り出ている。
審査員4人全員が満点
同賞の11回の歴史の中で、審査員4人全員が満点をつけたのは初めてだという。宣伝広告には、先輩作家らの称賛の声が並んでいる。
「文句なしの5点満点、アガサ・クリスティー賞の名にふさわしい傑作。──法月綸太郎(作家)」
「アクションの緊度、迫力、構成のうまさは只事ではない。とても新人の作品とは思えない完成度に感服。──北上次郎(書評家)」
「これは武勇伝ではない。狙撃兵となった少女が何かを喪い、何かを得る物語である。──桐野夏生(作家)」
12月4日の日経新聞読書面の週間ベストセラーによると、三省堂書店名古屋本店では早くも文芸書部門でベストセラーのトップ。このほか、丸善ジュンク堂書店文芸書、紀伊国屋書店全店の小説部門もトップになるなど、猛烈なスピードで大手有名書店を軒並み制覇しつつある。