中国の吉野家「臭い肉」使用告発で判明 なんとも複雑な経営事情

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南北で異なる運営企業

   消費者にとって「吉野家は吉野家」である。だが、中国進出が早かった吉野家の運営形態はややトリッキーだ。

   吉野家は1992年に北京に1号店をオープンし、その後全国に店舗を広げた。2000年代に中国に進出した日本の外食企業は多かったが、成功したのは吉野家、サイゼリヤなどごく一握りだ。吉野家は当時、上海、深セン、福建省などエリアごとに現地の大手企業と合弁会社を設立し、「中国という巨大市場をエリアごとに分け、現地事情を知っている企業と組んでローカライズ化した」ことが成功要因と評された。

   その後、吉野家の日本本社は中国事業の効率的な運営のため、2015年に統括子会社「吉野家(中国)投資有限公司」を設立。北京や東北地方は以前からフランチャイズ契約を結んでいた合興餐飲に経営を任せ、吉野家(中国)は中国南部を中心に店舗展開するようになった。

   現在、吉野家の店舗は中国に約550店あるが、うち約390店舗(2020年末時点)は合興餐飲傘下にある。今回の問題は吉野家(中国)が2019年に進出した安徽省の店舗で発生した。

   何か話題になったときにはSNSで拡散も炎上もする時代。一般消費者は吉野家の運営企業が地域によって違うなど知る由もなく、合興餐飲が運営する「吉野家公式アカウント」には、告発動画の公開後に苦情が殺到していた。合興餐飲にしてみれば「巻き込まれ事故」だったのだろうが、吉野家ブランドを看板にしている以上、もう少し丁寧な説明があっても良かったのではないかと感じた。

【連載】浦上早苗の「試験に出ない中国事情」

浦上早苗
経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。「中国」は大きすぎて、何をどう切り取っても「一面しか書いてない」と言われますが、そもそも一人で全俯瞰できる代物ではないのは重々承知の上で、中国と接点のある人たちが「ああ、分かる」と共感できるような「一面」「一片」を集めるよう心がけています。
Twitter:https://twitter.com/sanadi37
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