自分を三枚目にして
♪一度も咲かずに散ってゆきそうな バラが鏡に映っているわ...
ふられた少女の繰り言だと思っていた歌詞が、実は合併劇に巻き込まれた若手行員の恨み節...という種明かし。しかし、それを知った上で聴き直すと、冷徹な経営戦略に翻弄されるサラリーマンの悲哀までが歌詞の行間に滲み、味わい深いものがある。
♪あなたの心の ほんの片隅に 私の名前を残して欲しいの...
いまでは「第一」「勧銀」とも、行名としては残っていない。
いたずら心あふれる名曲の誕生エピソード。作者がメディアで触れたせいか、今でこそ一部には知られた話らしい。とはいえ40年前に聞いた梅沢さんは驚いたに違いない。
上記エッセイのタイトルは「人間、聞かないほうがいいこともある」。この結論に導くために、前段でお嬢さんの三味線の話から自身のギターへとつなぎ、ラジオで知った小椋ワールドの感動体験に至る。そして思いもよらぬ結末。なかなか手の込んだ構成だ。手数をかけているので、当人の裏話を聞いた梅沢さんの落胆も共有できる。
自らの「がっかり」を強調して、つまり三枚目になることで読者を楽しませるサービス精神...生まれながらの役者らしいと感心した。
冨永 格