ボロボロの道着をまとい、毎日1000発の「正拳突き」を放つ男性がいる。ユーチューバーの「樽江 突撃」(たるえ とつげき)さんだ。週刊少年ジャンプで休載中の漫画「HUNTER×HUNTER」(ハンターハンター)の連載再開を待ちながら、ひたすら正拳突きする様子を配信している。
同作の最終掲載は、2018年11月26日発売の「2018年52号」。すでに3年が経過した。樽江さんの初回配信は20年1月16日だが、再開のきざしが見えない中、正拳突きを続ける心境を本人に直接聞いた。
初回は2時間以上かけて1万回
「ハンター」という職業の主人公らが冒険や戦いを繰り広げる「HUNTER×HUNTER」は、1998年に連載を開始。たびたび長期間の休載をはさむことでも知られる。「2018年52号」の掲載時に「次号よりしばらくの間休載いたします」と告知した。巻末のコメント欄で、作者の冨樫義博さんは「次の10週分ネームは出来ているので体調や状況と相談しつつ原稿進めて行きます」とつづっていた。以来、休載が続く。
作中には「感謝の正拳突き」と呼ばれるエピソードがある。修行中の登場人物が、自分を育ててくれた武道への「感謝」をこめて、1日1万回の正拳突きを打ち続けるのだ。
樽江さんの配信は、これにならったもの。初回の動画では2時間以上かけて1万回の正拳突きを実行。翌日以降は回数を変え、「ハンターハンター連載再開まで一日一千回感謝の正拳突き」と題して配信している。
連載当初からのハンターハンターファンという樽江さんを、J-CASTトレンドが取材した。同作の連載休止はたびたびツイッター上でも注目を集めるが、休載自体はファンにとっては悲しい。そこで、休載期間を「補完」するようなポジティブな話題を提供したいと考えたことが、配信を始めたきっかけという。作中に関連しつつ、「素人」でもできそうな「感謝の正拳突き」を選んだ。
正拳突きだけで毎日1時間前後の時間を費やす。肉体的・精神的な負担はあるものの、「つらい」とは感じていないと明かす。20年1月16日に開始して以来、休んだことはない。
「記念日」より待ち遠しいのは
正拳突き配信を続けるモチベーションは2つある。自分で決めたことをやり続けたい思いと、チャンネル登録者数の増加という「結果」だ。11月30日現在、登録者は2万人を超える。樽江さんは「すさまじい幸運」と感じ、途中でやめるのは「もったいない」と考えている。
配信期間は意識していない。「今日から1週間がんばる」といった形で、毎回気持ちを新たに切り替えて取り組んでいる。当初決めていた通り、連載が再開すれば正拳突き配信をやめる可能性はあるが、先のことも深く考えていないという。
チャンネル登録者数が一定数を超えた時には、たびたび「記念日」と位置づけて、1000回ではなく1万回に増やして正拳突き配信を行うことがある。
次の「記念日」は登録者数が3万人を超えた時になるのか。記者が聞くと「おそらくは」と肯定しつつも、やはり樽江さんはハンターハンターの大ファン。連載が再開しないまま次の記念日を迎えるのは「本意」ではないという。
「『明日、連載を再開する』という情報が飛び込んでくるのが、一番うれしい」