新型コロナウイルスの接触通知アプリ「COCOA」に、またもトラブルだ。「iOS」「Android」のスマートフォン向けにリリースされた「1.4.0」版アプリで、正常に起動できない不具合が報告された。
バージョン「1.4.0」は、2021年11月25日に配布された。iOS版はすでにこの現象を解消した「1.4.1」がリリースされているが、26日19時現在、Android版の提供はまだだ。20年6月の登場以来エラーが多発するCOCOAの信頼感に、追い討ちをかける事態となった。
デジタル庁と厚生労働省が管理
COCOAの保守・運用管理は、デジタル庁と厚生労働省が連携して担う。デジタル庁公式ツイッター11月25日20時30分の投稿によると「1.4.0」の配布後、「一部の端末で強制終了する事象」が起きている。
半日以上がたった翌26日11時2分までに、「強制終了」現象が改善された修正版「1.4.1」がiOS向けにリリースされた。同庁ツイッターよると、Android版の新バージョンも「手続完了次第配布」する。
厚労省は、開発者向けコミュニティーサイト「GitHub」上で、COCOAのソースコード(コンピューターに実行させたい動作や処理が専用の言語で記載された文字列)を公開している。COCOAの仕組みを公開することで国民への透明性を確保するとともに、機能改善の意見を募ることを目的としている。
11月25日の16時17分、「GitHub」内のページで「COCOA v1.4.0 が起動しない」という題名のトピックがユーザーによって投稿され、16時20分にデジタル庁のエンジニアが「Android版でも発生しているという情報がありますね。すぐに調査します」と反応。デジタル庁関係者や他のユーザーとの間で、不具合と修正対応をめぐるやりとりが交わされた。
ユーザーからは「クラッシュレポート」(ソフトウエアの異常終了を報告するデータ)の提供が行われ、デジタル庁のエンジニアは不具合の詳細や修正案に関する考察を提示した。最終的には原因が判明したとし、修正版アプリを配布すると報告している。
10月27日に改善要求があったばかり
会計検査院は10月27日、厚生労働大臣に対し、COCOAの開発や保守などについて是正・改善を求めていた。改善要求の文書によると、厚労省はCOCOAの開発・保守のため、20年9月から21年4月までの間、業務委託先の「パーソルプロセス&テクノロジー」(パーソル)に対し約3億8088万円を支払っている。
そして21年2月、厚労省はCOCOAの接触通知が正常に機能していない不具合が発生していたと発表した。この不具合は、20年9月リリース版のアプリから起きていた。バグが長期間見逃されていた原因は、アプリの動作について適切なテストが実施されなかったことなどにあるとしている。
会計検査院の検査の結果、厚労省は、適切なテスト実施のために定められる対象項目や、テストの実施目的・実施内容といった具体的な事項を業務委託時の仕様書に一切定めていなかったという。
文書によると、厚労省は今後もCOCOAを引き続き運用していく。これにあたり、テストの実施目的や内容を明確に定めることや、不具合などに関する外部からの指摘をしっかりと開発・保守に反映できる態勢を構築することを求めた。
さて、厚労省発表の直近のCOCOA利用状況を見ると、9月30日から10月29日までの間に290件の陽性登録があった。一方、同期間の国内新規陽性者数は厚労省発表を合計すると1万8448人。単純計算で登録率は約1.57%ということになるが、不具合続きで普及状況もイマイチな中、いつまで運用は続くのか。