佐賀県大町町「2年で2度目」の大水害から3か月 元の暮らしはほど遠く

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「もっと町民の声に耳を傾けてほしい」

水害に襲われた際の生々しい記憶を語る弥永さん
水害に襲われた際の生々しい記憶を語る弥永さん

   街にあふれた水が引いただけでは、住民の暮らしは元に戻らない。この3か月、町民は暮らしの立て直しに懸命だった。

   弥永さんは地区の区長として各家庭を回り、住宅の被害認定に納得できない人たちの声を聞いた。被災者生活再建支援法が2020年12月に一部改正され、2年前の水害と基準が変わり、混乱もあった。判定によって支援金の支給額が変わる。弥永さんは「住民説明会を開いてほしい」と町長に相談、実現させたのだ。

「町長や町議は、被害を受けた家を回るなど動いてくれました。でも、もっと町民の声に耳を傾けてほしい」

   弥永さんは訴える。一方町役場では、大雨の後にもため池に地滑りの兆候が見られたため2度の避難指示発令となり、対応に追われた。各種支援の手続きを進める役目を担うなか、限られた人員で町民全てを訪問し、きめ細かなフォローを施すのは職員だけでは難しい。

   2年で2回目の被災に、町民の疲労は色濃い。氾濫した六角川の近くに住む女性は、高齢で一人暮らし。浸水時はボートで助け出された。その後自宅に戻ると、一軒家の中は泥だらけ。福岡県に住む息子とその友人が駆けつけ、半月かけて片付けた。

「2年前の水害では、家具を捨てずにとっておいたのです。でも今回は、2トン車4台分捨てました」
大雨で氾濫した六角川も、取材時は穏やかだった
大雨で氾濫した六角川も、取材時は穏やかだった

   暑さがこたえる時期、2階の部屋でエアコンが1台だけ使えたため、そこで生活した。被災前は1階で寝起き、生活していたので、2階への階段上り下りが体の大きな負担となった。1階に戻れたのは、1か月以上が過ぎてから。ようやく熟睡できるようになったのも、この頃だと振り返る。近所の住民は、頻発する大規模水害に「次もまた来る」と話していると明かす。土地をかさ上げして家を新築したら豪雨、浸水した住民もいたという。

「こういう話を耳にすると、『ここには住めんばい』と思ってしまいます」

   気丈に話していた女性が、この時ばかりは悲しそうな表情に見えた。

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