コロナ禍で「独学」ブーム 在宅勤務で勉強時間増、20万部超えの書籍も

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   新型コロナウイルスへの対応が長期化する中で、「独学」に関心が高まっている。リモートや在宅などで独自に勉強できる機会が増えたからだ。すでに関連本が多数出版され、20万部のベストセラーも。宅建試験など、資格試験の勉強に挑む人も増えている。

  • おうち時間を勉強に費やす人が増えているようだ
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3000円を超える大著

   ブームの火付け役と言われているのが『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』(ダイヤモンド社)。2020年9月刊行で、アマゾンの「学生の勉強法」部門でトップを続け、1200を超える高評価が付いている。「読むのが遅い。時間がない。続かない。頭が悪い。お金がない。やる気が出ない。何を、どう学べばいいか迷ったときの羅針盤」だという。


   著者は読書猿(どくしょざる)さん。ブログ「読書猿 Classic: between/beyond readers」を主宰している。

   788ページ、3000円を超える大著だが、すでに20万部を突破。東大や京大の生協でも売れており、大手5紙の書評に取り上げられている。

不朽の名作も

   同書の人気に触発されたかのように、関連書も次々と出版されている。『「超」整理法』のなどの大ヒットで知られる野口悠紀雄さんは21年6月、『人生を変える「超」独学勉強法』(プレジデント社)を出している。「人工知能の時代には独学の必要性が高まる」と書いている。

   7月には、「2ちゃんねる」の生みの親、ひろゆきさんが『無敵の独学術』(宝島社)を出している。


   岩波書店は11月、全国の協力書店で「独学新書!」フェアを開催。各分野の専門知をコンパクトに凝縮した教養新書こそ「独学」に最適なメディアであるという考えによる。ラインアップされた新書の中には、20年の新書大賞を受賞した『独ソ戦』などの近刊のほか、『日本の思想』『知的生産の技術』など不朽の名作が含まれている。

『独学でよかった』

   「独学」は今に始まったことではない。戦後間もないころの日本ではだれもが大学に進めるわけでもなかった。

   大御所の映画評論家、佐藤忠男さんもそんな一人だ。最終学歴は工業高校の定時制。すでに14年刊の著書『独学でよかった』で、読書を通じた独学の良さを振り返っている。同書の巻末には「独学派にすすめる99冊」がジャンル別に、佐藤さんのミニ解説付きで掲載されている。


   『「勤労青年」の教養文化史』 (岩波新書)によると、戦後の日本では、働きながら夜学で学んだり、読書会や学習サークル、人生雑誌、青年団活動などを通じて知識や教養を広げたりした若者は少なくなかった。「勤労青年」と呼ばれた。当時の日本では、「人文知は、インテリ層のみに支えられるのではなかった」。日本人の教養や知的欲求は「格差に喘ぐ若者たちによっても下支えされていた」と指摘している。

   コロナ禍では、教養的な独学だけでなく、実利を目指す独学も目立っている。朝日新聞は11月18日、宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、社会保険労務士など、資格試験の受験生が増えているという記事を掲載。理由として在宅勤務が増えて自宅で過ごす時間が多くなったことなどを挙げている。TACでは受験対策用の書籍の売れ行きが好調で、同社の出版事業は前年同期比39%増の売り上げだという。

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