成長の伸びしろ
リンネルは宝島社の女性向け月刊ファッション誌、このエッセイは今作で59回目という長期連載で、39歳の菊池さんが、仕事や子育ての日々をつづっている。
枕に顔をうずめて後悔する...いかにも女性を連想させる仕草である。男性がしない所作というわけではない。ただ、ひとり後悔する時も男なら、もう少し格好をつけるのではないか。私のような俗物はなおさらだ。
就寝前、現にこれをやる女性はそれほど多くはないにせよ、職場でもプライベートでも、人間関係で苦労する30~40代の女性なら「あるある」のひとつと思われる。
菊池さんが「どうやっても風化しない」という20年前のエピソード。筋だけ拾えば大した話ではないように思えるが、そこは当人にしか分からない「恥に対する感受性」のようなものが作用するはず。言葉を発した直後に反省できるのは成長の伸びしろがある証しで、作中の表現を借りれば「新たな自分との出会い」が期待できるということだ。
思うに、中高年で地位のある人ほど、後悔はしても反省はなかなかしない。すなわち、自己嫌悪が成長につながりにくい。そもそも自己嫌悪なんてものを知らない。
そう、枕に叫べるうちが花なのだ。
冨永 格