台風シーズンはようやく、一区切り。しかし今年の夏も熱海市の土石流や九州北部を中心とした長期間の大雨と、水害が相次いだ。
家が浸水すれば、そのまま住み続けるわけにはいかない。後片付けしようにも自分だけでは大変だ。それに金銭面の援助はもらえるのか。そもそも家が水浸しになって、どこでどうやって生活していけばいいのか――。途方に暮れる前に、知っておいたほうがよい情報は少なくない。
まず家の外を4方向から写真撮影
全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)はウェブサイト上で、自然災害に見舞われた際にどうすればよいかをまとめた資料を公開している。水害については、「まず行うこと」と「お金や住まいの支援」の2種類があり、イラストを交えて被災後の生活再建のための準備を分かりやすく説明している。記者はそれぞれを読み込んだうえで、JVOAD事務局長の明城徹也さん、広報部の神元幸津江さんに内容のさらなる解説を求めた。
以下、2つの資料が閲覧できるページにリンクしてあるので、PDFファイルをダウンロードしたうえで続きを読んでいただきたい。
【リンク先】
「水害にあったらまず行うこと」
「お金や住まいの支援」
――住まいが水害に見舞われたら、行政支援を受けるためにまず「自宅の被害状況を撮影する」とあります。自宅を離れ、別の場所に避難する人もいるでしょうが、撮影はどのタイミングで行えばよいですか。
JVOAD:発災したら、身の安全の確保が最優先です。撮影は、状況がある程度落ち着いて自宅に戻れるようになってからで構いません。必ず家の外を4方向から撮ってください。また浸水した高さが分かる写真が重要です。例えば白い壁が変色していたり、土や草がこびりついていたりが目安になるでしょう。雨が降り続くとこうした跡が消える恐れがあるので、気を付けてください。
――アパートやマンション住まいで、自室が浸水した場合はどうですか。
JVOAD:同じように写真を撮ってください。持ち家でも賃貸でも、のちに行政支援を受けるうえで重要です。被害が出ている場合は形に残しておきましょう。
罹災証明書=行政支援を受けるために必須
――次に「罹災(りさい)証明書」の申請についてです。支援を受けるうえで必須の書類ですが、「どこで、どう申請すればもらえるか」分からない人もいると思います。
JVOAD:市区町村の役所が申請窓口になります。発災後、役所のウェブサイトや住民に配布される広報誌を通してアナウンスされたら、申請に出向く必要があります。
――あらかじめ「罹災証明書は大切だ」と頭に入れておいたほうがよいですね。
JVOAD:現状では、ウェブと広報誌による告知がメインです。仮に避難所にいれば広報誌が掲示されて申請時期が分かるでしょうが、被災地域の外に避難した場合はこうした情報が届きにくい。自らサイトにアクセスして情報を収集する行動が大切になります。 「罹災証明書がどう役立つか」。これを分かっていないと「自分事」としてとらえにくくなり、申請が後手に回るかもしれません。「行政支援を受けるために必須だ」と、ぜひ理解しておいてください。
遠慮せずボランティア頼んで
――水に浸かった自宅を片付けなければなりません。泥だらけで重たい家財道具を外に運び出すだけでも大変です。「自力で全てできない」「誰かに手助けしてもらえないのか」と悩む人は、少なくないと思います。
JVOAD:片付けや清掃は、ボランティアの力を借りられます。依頼するには、地元の社会福祉協議会が設置する災害ボランティアセンターに連絡すればよいのだと、最近は知られるようになってきました。それでもまだ、ボランティアを頼む方法を知らなかったり、「手伝ってもらうのは申し訳ない」とちゅうちょしたりする人がいます。遠慮はいりません。「困ったことがあれば何でも相談を」と周知する活動が、これからも重要です。
――「今後どうやって暮らしていこう」と、いわゆる「心が折れそう」な人も出てくると思います。フォローの方法はありますか。
JVOAD:行政から様々な支援が受けられます。詳しくは「お金や住まいの支援」に一覧表を載せました。困ったら一人で悩まず、まず役所に相談することをお勧めします。
フォローとしては、まず被害を受けた人の話を聞いてあげる。被災地の場合、周りの人も同じように苦しんでいるのでなかなか自分の苦労を打ち明けにくい。別の地域から来たボランティアなら話しやすいですし、家の中が片付いていく様子を見て「もう一回がんばってみよう」と前向きになれます。
大切なのは「我慢をしない」
――「お金や住まいの支援」の一覧表を見ると、家が浸水で壊れた、家族が亡くなった、生活資金に不安がある、自宅のローンが残ったままといった場合、金銭面も含め行政からの支援制度が相当あるのですね。「こんなにあるのか」と、少々驚きました。
JVOAD:これらは、被災してから暮らしを本格的に立て直していく段階での「応急処置」として必要です。行政は支援内容の情報を順次発信しますが、被災した住民にとっては「こういった支援制度がある」と大枠が分からないと、自分がどういう道筋で生活を再建していけばよいか「設計図」が描きにくい。そのために一覧表を活用いただき、「自分がもし被災したら、どういうサポートが得られるか」を知ってもらえればと思います。
――支援の種類が多いのはありがたいですが、全てを覚えるのは難しいですし、自力で申請するのも大変そうです。
JVOAD:自分だけで決める必要はありません。例えば、お住いの地域の弁護士会に相談してみてください。無料相談窓口を設けていますし、近年ではファイナンシャルプランナー(FP)が加わって、生活再建のアドバイスを得られることもあります。また被災地支援に入っているNPO団体に声をかけて助けを求める方法もあります。
大切なのは「我慢をしない」「不安なことを訴える」です。どうしたらいいかわからないなら、それをそのまま相談をすればよいのです。どうぞ、各種の無料相談を積極的に活用してください。
ただ先に述べた通り、行政支援は言わば「応急措置」です。家を建て直すような場合、援助金だけではとても足りません。そのためにも火災保険・地震保険にあらかじめ加入しておくことを勧めます。
(J-CASTトレンド 荻 仁)