「中国はサッカー弱い」五輪金メダルは多いのに W杯予選も勝てない理由

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体格、体力、エゴイズムはサッカー向き

――中国の各スーパーリーグクラブは、育成カリキュラムの整理と指導者養成を、欧州から来ているテクニカルダイレクター(TD)に任せていることが多いようです。成果は出ているのでしょうか。

倉田:ポルトガル、スペイン、イングランド、イタリアやブラジルからTDを呼んでいますが、現段階では成果が出ているとは言えません。欧州やブラジルは競争がベースの上で育成カリキュラムがあります。中国は競争が少ないので、より細かい指導(ディテール)が必要になります。これは日本も同じです。
 選手育成では、認知(見る)、ものの考え方(メンタリティー)、コーディネーション(技術・先取り・タイミングコントロール)に働きかけることが特に大切です。例えば、認知なら身体の向き、先取りなら「スペースを作る、使う、3人目を生かす、数的優位を生かす」、ものの考え方では「主体性(自主性、向上心、勝利への意志)」「行動規範(努力、規律、団結)」といった内容。18歳を過ぎたら成熟した選手になっていく考え方が大切です。これらを競争の中だけで習得するよう期待していると、なかなか良い選手が出てこないように思います。
 中国の選手は日本の選手よりも、楽しむことが好き。そこを生かしながらも習得のための細かい指導が必要だと思います。合わせて中国の教育の理解も必要でしょう。中国人選手の体格(サイズ)や体力、そして「俺が!」というある種のエゴイズムは、サッカーに向いている。ディテールを徹底できれば、良い選手はもっと生まれてくるはずです。

――中国の指導者ライセンス制度はどうなのでしょうか。

倉田:中国サッカー協会が行っている指導者養成の中身はわかりません。ただ、国土が広いし人口も多いので、徹底するのは大変だろうなと思います。オランダには「4-3-3」が根付いていますが、国土が狭く人口も少ないので徹底出来た部分もあると思います。
 中国の場合、各省や各クラブでの主導が合っている気がします。私が所属していた「山東魯能」の育成部門は芝のピッチが25面以上、雨天練習場、フットサルコート数面、ホテル、レストラン、学校などが完備していました。このようなハード面をもっと生かして、各省や各クラブが指導者を養成しても良いのかなと思います。ハードは整っているのであとはソフトですね。
 指導者養成に関して一つ気になるのは、中国は幼い段階で、「勉強をする人」と「スポーツをする人」がはっきりと分かれてしまう傾向にある点です。ある意味で指導者は、選手以上に気付きや学びが必要になると思います。意思疎通を図る際もそうですし、例えばある練習メニューについて、それをコピーするだけでなく自分の中で完全に理解し、ゲームモデルを作る時に概念(コンセプト)化していく能力が必要だと思います。

倉田安治(くらた・やすはる)

   1963年2月1日生まれ。現役時代はDFとして本田技研、読売クラブでプレー。元日本代表。引退後は筑波大学大学院でコーチ学を学び、指導者の道へ。アビスパ福岡、ヴィッセル神戸のヘッドコーチ、FC岐阜の監督等を務めた後、2011年から単身中国に渡り、日本人として初めてサッカーの指導を行う。中国スーパーリーグでは大連阿爾浜の監督を務め、アンダーカテゴリーでは遼寧省代表チームや山東魯能を率いて全国大会で5度の優勝に導く。

文:石井紘人(いしい・はやと)
   ラジオやテレビでスポーツ解説を行う。主に運動生理学の批評を専門とする。著書に『足指をまげるだけで腰痛は治る』(ぴあ)『足ゆび力』(ガイドワークス)など。『TokyoNHK2020』サイトでも一年間に渡り、パラリンピックスポーツの取材を行い、「静寂から熱狂そしてリスペクト」などを寄稿。
   株式会社ダブルインフィニティ代表取締役でもあり、JFA協力、Jリーグと制作した『審判』、日本サッカー名シーン&ゴール集『Jリーグメモリーズ&アーカイブス』の版元でもある。

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