回転火鍋は「テーマパーク」
池袋や高田馬場の中国料理を食べ歩き、ツイッターやブログで情報発信をしている阿生さんは「火鍋と中華フードコートは双璧」と話す。他の料理や業態に比べ、日本人フォロワーや読者の反応が段違いにいいそうだ。
この数年の火鍋ブームに貢献したのが、2015年に池袋に出店し日本進出した。「海底撈(ハイディラオ)」。同ブランドは競争の激しい火鍋業界にあって、「待ち時間のネイル無料」「どんな要望にも対応しようとする店員」などサービスの良さで差別化を図り、業界で初めてIPO(新規株式公開)も実現した。池袋の店舗は中国らしさがありながら、日本語がきちんと通じ、火鍋ビギナーにも分かりやすいセットメニューが充実している。
ただし、セットメニューには火鍋の定番具材「鴨血」や臓物は入っていないし、「ガチ中華」と言われて日本人が思い浮かぶカオス感は薄い。ある中国人は「日本人の知り合いを連れて行ける安心・安全中華」と形容した。
一方で、日本の火鍋好きの間ではやっている「回転火鍋」をガチ中華と呼ぶことに、筆者は賛同しづらい。たまに日本人の友人に連れて行かれ、「本家と比べてどう?」と聞かれるし、誰かの書いたブログを見ても「本家の味」と書かれているが、回転火鍋という業態はそもそも中国ではメジャーではなくて(存在はする)、中国版ウィキペディアのようなサイトにも、「回転火鍋は中国の伝統的な火鍋が日本の回転寿司のスタイルを取り入れた新しい飲食業態」と記載されているからだ。コロナ禍の孤食推奨もあって注目されたが、具材を回転させる合理性はあまりないし、ガチというより「テーマパーク中華」なのではないか。