【連載】浦上早苗の「試験に出ない中国事情」
「街中華」に対抗した「ガチ中華」がブームになっている。ガチ中華は「日本人向けにアレンジされていない、本場の味を提供する中国料理」で、東京・池袋北口や埼玉・西川口が「聖地」なのはご存じの通り。
ただし、これだけ定義が明確であるにもかかわらず、中国料理に多少通じている人同士で話すと、「ガチ」の範囲にかなり個人差がある気がする。
羊肉串や麻辣湯は安さが魅力なのに
羊肉串、小籠包、麻辣湯、汽鍋鶏、米線、水餃子......。どれも中国では非常にポピュラーな料理で、筆者も2010年から6年間大連市に住んでいたころによく食べていたが、今は池袋、西川口、高田馬場などにたくさん店がある。店内は中国語が飛び交い、酸梅湯や王老吉といった中国の飲料も充実している。
ただし、筆者は日本ではこれらの店にほとんど行かない。上に挙げた料理は中国では学生食堂にもあるような庶民の料理で、「おいしい」だけでなく、「安く腹を満たせる」点が大きなポイントだった。中国だとスターバックスラテ1杯分の価格で羊肉串10本前後、あるいは麻辣湯1~2食分が食べられる。
日本で同じものを食べると、価格が3~5倍する。スタバラテ1杯に換算すると、羊肉串は2~3本。麻辣湯は1食分も食べられない。
最近友人たちの間で話題の麻辣湯チェーンがあるのだが、都内の店舗でおなか一杯食べたら丼1杯で1000円どころか2000円を超える。中国だと300~500円だ。
現地ではお金のない人向けの店で、「安っ」と感動して食べていたのに、日本では全然庶民の値段ではなくなる。
中国人や中国生活経験がある日本人は当然価格差を知っていて、それでもお気に入りの味を求めて行く人もいれば、筆者のように「ガチ中華ってより、観光地中華じゃん」と滅多に行かない人もいる。