日本人のノーベル賞受賞に関連して、詩人の白鳥省吾(1890~1973)にスポットが当たっている。物理学賞に選ばれた真鍋淑郎さん(90)の米ニュージャージー州の自宅に、白鳥の詩の墨書が飾られていたからだ。半世紀ほど前に亡くなった、今やほとんど忘れられた詩人と、気候温暖化を研究した世界的気象学者にどんな接点があったのだろうか。
井上靖の書と共に掲示
真鍋淑郎さんの自宅リビングには、井上靖と白鳥省吾の額入りの墨書が飾られていた。各メディアにその写真が紹介された。
インタビューで真鍋さん宅を訪れた朝日新聞の米国特派員、藤原学思記者は、井上の書については解読している。
「南紀の海はその一角だけが荒れ騒いでいた......」
この詩は井上が新聞記者時代、三重・熊野を訪れた際に書いた「渦」という詩の一節だという。しかし、白鳥の書については言及がなかった。
果たして、白鳥とはーー。
詳しく報じたのは10月16日の河北新報だ。「ノーベル賞・真鍋さん宅に『白鳥省吾』の詩 宮城の研究家ら関心」という見出し。「栗原市築館出身の民衆詩派詩人白鳥省吾の詩の墨書が飾ってあった。栗原市の白鳥研究家らは真鍋さんと白鳥のつながりに関心を寄せている」。白鳥が宮城県出身であったことから、同県を基盤とする河北新報は大きく取り上げた。
白鳥の墨書の詩は1922年発行の第6詩集「共生の旗」に収録された「夕景」の第1連の抜粋だという。夕景は3連構成で、小牛田駅(宮城県美里町)から石巻港(石巻市)に向かう列車で見た厳冬期の農村の貧しさが描かれている、と同紙は詳しく説明している。