【連載】アイスリボン・藤本つかさ 素顔の女子プロレス
今月も藤本つかさのプロレス時間がやってきました!
実は9月末から10月中旬まで、メキシコに行っており、絶賛隔離期間中のため、ゆっくり自宅でコラムを執筆しております。
CMLLという世界的メジャー団体に参戦し、しかも88年の歴史で初めて行われた、国を挙げての女子版グランプリ大会に日本代表として参加しました。おかげでプロレス人生変わりました。
今回のテーマは「メキシコ遠征」についてお話しします。
「信じて飛ぶんだ」
まず、日本とメキシコのプロレスで圧倒的に違うと感じたことを3つお話しします。
その1:ルール
メキシコは、「ノータッチルール6人タッグ3本勝負」が基本です。今回日本人が3人いたため、自然と日本VSメキシコの試合が組まれました。キャプテンを決め、先に2本取った方が勝ちです。キャプテンに勝ったらすぐに試合が終わるので、キャプテンは高確率で狙われます。ちなみに私は全試合キャプテンだったため、たくさん攻められました。日本と異なるルールのため、しっかり把握していなければなりません。
私も2本目が終わった瞬間に相手を奇襲したところ、格闘技の試合のように綺麗なお姉さん達がリング上でプラカートを掲げて歩き終えるタイミングだったため、警告の笛を鳴らされてしまい、危うく失格になるところでした。
その2:「できるできない」じゃない!「やるかやらないか」
いくつか合同練習に参加させてもらいました。中でも、メキシコを代表する国民的レスラー、ミスティコ選手に練習指導して頂いたときのこと。「トぺ・スイシーダ」を練習。13年間やったことなかったので、内心怖くて絶対無理と思っていました。ちなみにトペスイシーダとは、ルチャリブレにおける飛び技で、リング上からリング外にいる相手に、頭から突っ込む体当たり攻撃のこと。
「ロープに引っかかっても大丈夫。僕たちが支えるから信じて飛ぶんだ」
世界のミスティコ選手にここまで言われたら、もう飛ぶしかない。私に選択肢はない。やるしかないんだと。勇気を振り絞った結果、成功!怖かったけど、その分達成感があり、これはいつか試合で出そうと心に誓った。なんたって、ミスティコ選手直伝トペスイシーダだもんね。
街を歩けば「tsukasa!!!」
その3:プロレスは国技
CMLLはアレナメヒコという日本武道館のような会場で、週に2、3回定期戦を行っています。街を歩けばプロレスショップだらけ。街の看板もルチャドール。地上波テレビはもちろん、雑誌や新聞にも表紙がほとんどプロレスでした。
一番実感したのは、メキシコで1試合しかしていない段階で、街を歩いていたら、
「tsukasa!!!」
とたくさんの人に声をかけられ、写真を撮ったのが両手で数えきれないほど。1試合しかしてないのにこれだから、メキシコ遠征最終日はとんでもなかったです。子どももプロレスごっこが当たり前。まさに国を挙げてのスポーツでした。
そんな国技だからこそ、日本ではやらないルチャ要素の技やポージング、コーナーにあがってアピールなどを行いました。今回の遠征は日本人選手が3人いたので、日本VSメキシコでの試合がほとんど。日本といえば礼儀正しいイメージなので、3人で両手を合わせてお辞儀ポーズ。これが大ウケで、子どもたちも会場でまねをしてくれました。
日本ではコロナの影響で声援禁止が多いけれど、メキシコでは対策を徹底した上で、声援はOK。久しぶりに大歓声や大ブーイングを浴びて、とても気持ちよかったです。観客席から声が聞こえるという、ちょっと先の日本の未来を体感してきました。
また、私の名前は「tsukasa」。これ、実はメキシコ人にとってとても覚えやすい名前らしいです。
メキシコのことわざで「micasa sucasa(ミカサトゥカサ)」があります。これは英語にすると、「my house your house」で「私の家はあなたの家。気軽にお越しください」という意味です。スペルは違いますが、「ツカサ」は「あなたの家」と発音が似ていて、みんなにすぐ名前で呼ばれました。
一番使ったスペイン語は
【メキシコフード】
メキシコでタコスはもちろん食べましたが、一番お気に入りのメキシコ料理は「ソパデ」というスープと、グアダラハラで食べた「ビリア」というヤギ肉煮込みスープでした。どちらもお肉がとても柔らかく、スープですがボリューミーですぐ満腹。
メキシコ料理は量が多くて、食べきるのに苦労していたのですが、日本と違って少し残すのが礼儀と聞きました。残すくらい満腹ですという意味らしいです。食べきると足りないととらえられるそうで、ここでも文化の違いを痛感しました。
【持参していてよかったもの】
おいしい食べ物いっぱいですが、屋台などでは食あたりに合うこともあります。私は大丈夫でしたが、カメラマンはおなかを壊してしまい、持参していた正露丸を飲んでいました。また、トイレットペーパーがないところも多々あり、もってきて正解でしたね。
ちなみにスペイン語で一番よく使ったのは「バ二ョ」です。「トイレ」の意味です。
レスラーならではのものとしては、ロキソニンテープです。空気が薄い中、リングでルチャ練習や飛び回る技練習が多かったせいか、体中あざだらけになっていました。
「アレナメヒコ」でメイン務めた誇り
今回、コロナ渦でのメキシコ遠征は正直怖いと思っていました。ですが、メキシコ滞在中5回もPCR検査や抗原検査をおこない、選手、スタッフ、マスコミ全員が感染対策をしっかりしている状況をみて、日本よりも安心して試合ができました。リングと控室の消毒はまるでシロアリ駆除のようで、消毒部屋もあり、煙を浴びることも。
こういった対策を得て、女子版グランプリでは決勝進出。メキシコVS多国籍軍という構図で、多国籍軍には日本の他に、チリ、米国、コスタリカ、パナマの選手が集結。CMLL式7人タッグイリミネーションタッグマッチ負け抜け方式という、過酷なルールでした。
私は最後の2人まで残り、決勝進出。およそ1時間にも及ぶ試合で、準優勝でしたが、アレナメヒコという大きな会場のメインイベントを務めたこと、誇りをもって日本に帰国できました。アイスリボンとCMLLが業務提携を行ったこともあり、日本とメキシコの行き来が増えることを願って、よりたくさんの交流と対抗をしていきたいと強く思った遠征でした。
世界にライバルがたくさんいた!
そのためにも、11月13日大田区大会で春輝つくしから防衛して、世界のライバル達と防衛戦をしていきたいと思いました。
ムチョスグラシアス!!
【連載】アイスリボン・藤本つかさ 素顔の女子プロレス
宮城県利府町出身。利府町観光大使。
東北福祉大学卒業後、広告代理店に就職。上京後、芸能事務所にスカウトされる。プロレスを題材とした映画「スリーカウント」出演のため、2008年プロレス団体アイスリボンの練習に参加したところからプロレスラー人生が始まる。
2015年アイスリボン取締役選手代表就任。18年には東京スポーツ新聞社制定女子プロレス大賞受賞。21年8月23日デビュー13周年を迎える。
【アイスリボン公式YouTube】
https://youtube.com/user/iceribbon
【藤本つかさ公式YouTube】
https://youtube.com/channel/UC_V0vfhOMxE9bCVvxjJ9JBw