政治家のツイート 能町みね子さんは地震発生時の「揺れた」に注目

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点呼にも似た儀式

   政治家のツイートを正面から分析する試みはたまにあるが、新政権を見舞った地震をネタに一本書くところが能町さんらしい。何よりコラムニストに必須なのは、あらゆる事象を面白がる精神だ。数本のツイートで本質は分からない、なんてことは百も承知で。

   さて、能町流の「地震ツイ診断」によれば、ツイッター使いのホンモノは「河野派」だ。「取りつかれている」「中毒」という尖った表現で、ネット空間での投稿が日常生活の一部、あるいは政治活動の重要手段になっていることを指摘する。

   他方、岸田氏や枝野氏ら党首級がそろう「岸田派」は、ツイッターの特徴である速報性を自覚しているものの、発信は自らの政治主張が軸。河野氏らに比べ穏健である。

   速報性に難がある「高市派」は、視聴に一定の時間をとらせる動画での主張が交じるのが特色で、遅いうえ支持者意外には届きづらいという。

「高市・山本の2人はネットで支持を集めているイメージがあるので、意外です」

   私も相当なヘビーユーザー(河野派?)である。確かに地震の時、書き込める状況であれば「揺れたよね」などと呟くことがある。そして、意味のないこのツイートに少なからぬ「いいね」がつく。こうして、同じ地域、同じ国で仲よく大地に揺さぶられた「共感」がネット空間に広がり、たいていの場合、ほどなく雲散霧消していく。

   思うに「いま揺れた」はある種の生存証明であって、それに対する「いいね」は「私も生きてるよ」と返す点呼のような儀式ではあるまいか。河野氏はどうか知らないが、ツイッターを多用する人には寂しがり屋が多いのかもしれない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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