北欧諸国が米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンについて、まれに心筋炎などの副反応を引き起こすリスクがあるとして、30歳以下の男性への接種を中止したと報じられている。
日本でも集団接種や職域接種で、モデルナワクチンを接種した人は多い。これまでにも、異物混入が発覚して接種が中断したことがあり、不安を感じる人は少なくない。
まれに心筋炎などの副反応
時事通信は2021年10月8日、フィンランドが7日、米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンについて、まれに心筋炎などの副反応を引き起こすリスクがあるとして、30歳以下の男性への接種を中止したと報じた。
スウェーデンやデンマークも6日から若年層への接種を取りやめており、北欧諸国でモデルナワクチンを避ける動きが広がっている。
フィンランドの研究機関によると、これら3か国とノルウェーを対象に行われた調査で、モデルナワクチンを接種した30歳未満の男性は副反応として心筋炎のリスクが高まるという結果が出た。既に欧州医薬品庁(EMA)で詳細な分析が始まっているという。
これを踏まえ、フィンランドは30歳以下の男性への接種は米ファイザー製に変更。スウェーデンは30歳以下、デンマークは18歳未満へのモデルナ製の投与を取りやめた。
日本テレビは、こうした副反応は特に2回目の接種を受けた場合に顕著だが、「リスクは非常に小さい」というスウェーデンの保健当局の見方を伝えている。
モデルナ社の広報は、「心筋炎などのリスクは新型コロナに感染した場合に高まるものであり、ワクチン接種こそがこうした症状を防ぐ最善の方法である」とコメントしているという。
日本では異物混入
日経新聞によると、松野博一官房長官は7日の記者会見で、スウェーデンなどの保健当局が米モデルナ社製の新型コロナウイルスワクチンの若者への接種を中断したことについて、「副反応疑いの報告を注視していく」と語った。
モデルナ性のワクチンは、日本では今年8月に異物の混入が見つかり、使用見合わせ・自主回収の騒ぎになったばかりだ。
読売新聞は10月13日、厚生労働省が、10、20代の男性には米ファイザー製の接種を推奨する方向で検討を始めたと報じている。
同省の9月12日までの副反応疑いのまとめでは、モデルナ製接種後の心筋炎・心膜炎は10代男性で100万人あたり21.6件、20代男性で同17.06件報告されている。ファイザー製では10代で同1.87件、20代で同13.08件。モデルナ製の頻度が高かった。
厚労省は「念のために」と、ファイザー製推奨の検討を始めたという。
ファイザー製と互換性
今回の北欧の対応は、今後の「交差接種」に影響を与える可能性もある。「交差接種」とは種類の異なるワクチンを接種すること。
ワクチンの複数回接種では通常、同一ワクチンの接種が推奨されている。しかし、生産・需給状況によっては、1回目と2回目、あるいは3回目で異なるワクチンを打たざるを得なくなることも想定されている。北欧で1回目にモデルナを接種した若者は、2回目をどうすればいいのか――。
こうした例外的なケースについて、米国疾病対策センター(CDC)は「1回目に接種したmRNAワクチンの種類が不明、または同一ワクチンが入手困難な場合、28日以上の間隔を空けて使用可能ないずれかのmRNAワクチンを接種しうる」としている。
一方日本では、8月30日に加藤勝信官房長官(当時)が「有効性、安全性に関するデータは十分に得られていない。異なるワクチンの使用を積極的に推奨する状況にはないと認識している」と語っていた。だが共同通信は10月9日、「交差接種」の効果や安全性について、日本でも国の医療研究支援や予算配分を担う「日本医療研究開発機構」の研究班が検証を始めたと報じている。「特定のワクチンの供給が停止するなど、異なる製品を接種せざるを得ない事態に備え、データを集める」という。
北欧のモデルナ中止で、そうした不測の事態が現実になっている。3回目の「ブースター接種」や、国産ワクチンなども視野に入ってきただけに、日本でも「異なる製品を接種せざるを得ない」状況への備えを急ぐことになりそうだ。