着られる服はひとつ
GINGER(幻冬舎)は女性向けのファッション・ライフスタイル誌。本号の特集は、お金の上手な使い道を20~30代にやさしく説くもので、「1万円で何を買う?」「失敗しない買いの決め手」「老けないための投資美容」などの企画が並んでいる。
おしゃれの精神性にも通じた齋藤さんは、特集冒頭を飾る筆者として適任と思われる。娘世代の読者に向けて、自信あふれる「...なのだ」文体で持論を展開する。
編集部がつけた《お金持ちすぎるとセンスをくるわせる。洗練された人生の鍵は、今、捨てる計算》というタイトルは明確だ。自由に使えるお金が一定あるとされるアラサー世代だが、「限られた予算の中での創意工夫がセンスを鍛える」「お金が足りないから考える」というメッセージには励まされる読者が多いだろう。「上手に捨てて、家の中の空気を浄化する」という一節は、スピリチャルとの境界線が曖昧な齋藤節である。
コロナ禍で旅行や外食が激減し、娯楽や交際への出費が減った分、自分磨きに回すお金が増えた人は多い。コロナが終わったら「リベンジ消費」が爆発する、との見方もある。
しかしモノからコトへ、モノでも所有からレンタル、シェアリングへという流れはもはや変わるまい。資産や収入がどれほどあろうと、身体はひとつ。同時に身につけられる服はひとつしかないのだから。
冨永 格