食欲の秋。焼き芋が食べたくなる季節だ。
自宅でカンタンに焼き芋を作る方法は幾つかあるが、味、調理時間、手間にどのような差があるのか。(1)トースターでじっくり焼く、(2)アイラップで「レンチン」、(3)炊飯器にお任せする、と3種の作り方を比べた。
低温で長く焼くと「甘さ」増す
今回使うのは、シルクスイートという甘みの強い品種。サイズは若干の差があるが、25センチ前後と大きめの3本を選んだ。
まず(1)トースターで焼く方法。サツマイモ菓子専門店・芋工房かくたに(静岡県富士宮市)の工場長、望月大輔さんに教えてもらった。
サツマイモを水で濡らし、アルミホイルにくるんだら、最低限のワット数で1時間以上(サイズなどによって加熱時間は変化する)じっくりと焼く。ポイントは「低温で長く焼く」。すると甘さが増すという。
「品種を問わず、今の時期に市販されているサツマイモは掘りたてなので、ホクホクの焼き芋が出来上がります。ねっとり系にしたいのであれば、12月頃に出回るサツマイモを使ってください」(望月さん)
続いて(2)アイラップでレンチン。以下の要領で調理する。
・サツマイモを塩水に1時間以上つける。濃度目安は、0.7%(7グラム/1リットル)。
・濡らしたキッチンペーパーを、塩水につけておいたサツマイモに巻きつけ、アイラップへ結ばずに入れて2分レンチン(500ワット)。
・更に解凍モードで20分レンチン。
アイラップの公式ツイッター担当者に取材すると、電子レンジに解凍モードがない場合、100~200ワットに設定して「20分レンチン」すればよいそうだ。品種、温度、大きさによって最適な加熱時間が変わるため、様子を見ながら調理してほしいという。
最後に、炊飯器にお任せする調理法。20年10月8日付記事で、作り方を紹介している。サツマイモをよく水洗いし、炊飯器の底に付くように並べたら、水を200ミリリットル程度加えて、コメを炊くのと同じように「炊飯」スイッチを押すだけ。途中でひっくり返したり、加熱時間を調整したりする必要はない。1時間ほどで完成した。
甘さでは「トースター製」に軍配
かくして、3種それぞれの調理法で作った焼き芋が出そろった(画像1)。ざっと見た印象では、「炊飯器焼き芋」が最も水気を多く含んでおり、触った感じもやわらかい。反対に「トースター焼き芋」は水分感が薄く、アイラップ製はその中間といったところだ。
食べ比べた結果の印象をまとめた。
(1)トースターでじっくり焼く
所要時間:2時間半
甘さ:3種のうち、頭一つ分抜けて甘い
食感:ホクホク
(2)アイラップでレンチン
所要時間:約1時間半
甘さ:しっかりとした甘さ
食感:しっとりとホクホクが共存
(3)炊飯器にお任せ
所要時間:約1時間
甘さ:甘い
食感:水気を含んでいるため、しっとり感がある。「ねっとり」とまではいかない
記者の判定では、甘さは確実に(1)に軍配が上がる。所要時間が最も長く、何度か転がしたり、固さを見て加熱時間を調整したりする必要もあるので、手間の分だけおいしいということだろう。
反対に、(3)は手間がかからないのが魅力。水気を含んでいるため、つぶしやすく、別の料理にもアレンジできそうだ。甘さだけでなく、しっとり感があるので、少しでもねっとり系に近付けたい人にとってはうれしい。
(2)は3つの中で最もバランスが取れていると言えそうだ。塩水につけておく分、時間はかかるが、基本的に放置でよく、食感もホクホクしすぎていない。記者は(3)の焼き芋の甘さが、水分のせいでややわかりづらいように感じたが、(2)はストレートな甘みがあった。
12月に同じ条件で作ると、より「ねっとり」した焼き芋を楽しめるかもしれない。ホクホクファンにとっては今が食べ頃だ。