離れて暮らす両親「今後会えないのでは」
実はAさんは、がん闘病中だ。2021年5月に手術も受けた。国立がん研究センターの公式サイトには、「一部のがん患者さんは新型コロナウイルス感染症で重症化しやすい」とある。そのため「ワクチンを打ちたい、でも...」と悩んでいるのだ。
コロナ感染リスクを避けるため、家からほとんど出られない。周りの人に気を遣わせていることへの負い目や感染への恐怖、離れて暮らす両親や姉妹に「今後会えないのでは」という不安も抱えている。しかし、家庭内で接種の話題が出ると、アナフィラキシーショックの恐れがぬぐえない状態で「命を懸けるのか」という話になる。
Aさんが勤務する職場では集団接種が実施され、近しい同僚は皆、接種済みだ。一方Aさんは、在宅勤務を続けている。上司や同僚はAさんの状況を理解し、「出社しなくていいよ」、「ワクチンを打っていないから、来るべきじゃないかもね」と声をかけてくれる。
しかし、その言葉が時につらくなる。「来なくていい」という言葉の響きで、ネガティブな思考に陥ることもある。
接種したくてもできないAさん。しかし「表面的には、『打っている人』と『打っていない人』しかいません」。わけがあって未接種なのに、例えば「ワクチンパスポート」が登場すれば、理由はどうあれ「打っていない人」とひと括りにされてしまう。
「理解してもらうためには、打てない理由を話さなければいけなくなる。でも、話すのはつらい」
Aさんの苦悩は深い。