新型コロナ「飲み薬」で重症化防げる でも「ワクチンいらない」わけじゃない

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   米国で開発中の新型コロナウイルス飲み薬が、入院や死亡リスクを半減させるなど大きな効果を上げていることがわかった。早ければ年内にも、軽症・中等症患者を対象に使えるようになりそうだという。予防用のワクチンに加えて、コロナ対策の新たな切り札として期待が高まっている。

  • 飲み薬の開発は朗報だが、予防のためのワクチン接種も大切(写真と本文は関係ありません)
    飲み薬の開発は朗報だが、予防のためのワクチン接種も大切(写真と本文は関係ありません)
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日本でも特例承認か

   米製薬大手のメルク社は2021年10月1日、同社が共同開発中の新型コロナウイルスの経口薬「モルヌピラビル」が、臨床試験(治験)で入院と死亡のリスクを50%減少させることが確認されたと発表した。今後、米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する見通しだという。

   毎日新聞によると、国内で承認済みの軽症・中等症患者向けの治療薬はいずれも点滴薬で、医療関係者の作業が必要になる。一方、モルヌピラビルは自宅で服用できるため医療機関の負担が軽減されるとの期待もある。

   発熱やせきなどの初期症状がある患者が対象となり、1日2回、5日間服用することで重症化を防ぐ効果があるとされている。

   米国政府はすでに6月、同社と170万人分を12億ドル(約1300億円)で購入する契約を結んでいる。毎日新聞の取材に、日本政府関係者は「米国で緊急使用許可が出れば、日本国内での申請を経て、年末には特例承認されるだろう」との見通しを語っている。

「三点セット」が必要

   新型コロナ治療薬の開発は国内でも数社が取り組んでいる。塩野義製薬は9月27日、開発中の治療薬について、初期の治験を終え、中間に当たる第2・最終の第3段階の治験を始めたと発表している。来年1~3月の実用化を目指しているという。

   新型コロナに、飲み薬が使えるようになりそうだという報道を受けて、インターネットでも歓迎の声が出ている。中には、ワクチン接種は躊躇していたが、飲む薬なら、という人もいるようだ。しかし、ワクチンは予防薬、飲み薬は感染してからの治療薬なので両者は全くの別物だ。

   塩野義製薬の手代木功社長は、「日経ビジネス」21年3月31日号のインタビュー記事で、コロナ対策では「ワクチン、治療薬、診断薬」の三点セットが揃うことが重要だと説明。「そのような状況になるのは22~23年ではないでしょうか」との見通しを語っている。

経済にも影響

   このところ株価が低迷している米国ではメルク社の飲み薬に対し、別の期待感も高まっている。

   ウォール・ストリート・ジャーナル日本版は10月5日、「メルクのコロナ治療薬、バイオテク業界の起爆剤に 入院抑えるコロナの抗ウイルス剤、投資家も必要性認識」というニュースを報じている。

   メルクの株価は1日午前の取引で約10%急伸しており、バイオテクノロジー業界の起爆剤となる可能性があるとしている。

   新型コロナワクチン開発に成功した米モデルナ社や、独ビオンテック社の株価は大きく上昇した。ワクチンに続く飲み薬の開発・承認は、低迷する米国株式市場でも待ち望まれているようだ。

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