老後の交友 宇多喜代子さんは「同時代の生存証明」に価値を見出す

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

ストレスの9割は

   著名な心理学者によれば、人のストレスの9割は人間関係に由来するという。週刊誌の老後特集などでは、しばしば「リタイア後は自分(または夫婦)中心に生きよう」といった記述も目にする。ちょっと前の流行り言葉でいえば、親戚を含む交友関係も「断捨離」の例外ではなく、「終活」の一環として徐々に整理すべし、というわけだろうか。

   確かに、惰性で続く虚礼の類をやめるだけで、自分の趣味や余暇に割ける時間は増える。宇多さんも書くように、加齢とともに物事に注げるエネルギーの絶対量も限られてくるのだ。私もそのへんはドライに割り切るタイプの人間なのだが、「終生の話し相手」のような存在は何人かキープしておきたいとも思う。

   会食時の会話で心底楽しいのは、現在の趣味や習慣、過去なら宇多さんと同様、幼少~青年期の社会風俗、文化、メディアなどの話題である。私がその年頃を生きた1960~70年代は日本にも勢いがあり、語るべきことも多いのだ。

   昔話を好むのは老いの証しとも言われるが、老いた者同士なら誰に遠慮することもない。小さな同窓会のように、同時代の体験を好きなだけ確かめ合えばいい。

〈過ぎし日を重ねて楽し夜長かな〉

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

姉妹サイト