ストレスの9割は
著名な心理学者によれば、人のストレスの9割は人間関係に由来するという。週刊誌の老後特集などでは、しばしば「リタイア後は自分(または夫婦)中心に生きよう」といった記述も目にする。ちょっと前の流行り言葉でいえば、親戚を含む交友関係も「断捨離」の例外ではなく、「終活」の一環として徐々に整理すべし、というわけだろうか。
確かに、惰性で続く虚礼の類をやめるだけで、自分の趣味や余暇に割ける時間は増える。宇多さんも書くように、加齢とともに物事に注げるエネルギーの絶対量も限られてくるのだ。私もそのへんはドライに割り切るタイプの人間なのだが、「終生の話し相手」のような存在は何人かキープしておきたいとも思う。
会食時の会話で心底楽しいのは、現在の趣味や習慣、過去なら宇多さんと同様、幼少~青年期の社会風俗、文化、メディアなどの話題である。私がその年頃を生きた1960~70年代は日本にも勢いがあり、語るべきことも多いのだ。
昔話を好むのは老いの証しとも言われるが、老いた者同士なら誰に遠慮することもない。小さな同窓会のように、同時代の体験を好きなだけ確かめ合えばいい。
〈過ぎし日を重ねて楽し夜長かな〉
冨永 格