自民党の新総裁に決まった岸田文雄氏の愛読書は、ドストエフスキー『罪と罰』、吉川英治『宮本武蔵』、陸奥宗光『蹇々録』(けんけんろく』だという。日経新聞が報じている。『罪と罰』や『宮本武蔵』は有名だが、『蹇々録』は初めて聞いたという人が多いのではないだろうか。どんな本なのだろう。
易経からタイトル
著者の陸奥宗光(1844~97)は歴史の教科書には必ず出てくる人だ。明治期の外交官、政治家。外務大臣として不平等条約の改正に尽力したことで知られる。
『蹇々録』は、晩年の陸奥が残した外交にまつわる記録だ。機密性の高い外交文書をもとにしているので、長く非公開とされ、1929年に初めて公刊された。明治外交史上の第一級史料だという。
今では、岩波文庫や中公クラシックスで読むことができる。中公クラシックスは、単に『蹇々録』というタイトルだが、岩波文庫版は『新訂 蹇蹇録―日清戦争外交秘録 』。サブタイトルに「日清戦争」が付いている。
岩波文庫によると、同書は日清戦争(1894~95)における日本外交の全容を述べた、当時の外務大臣=陸奥宗光の回想録。表題は、「蹇蹇匪躬」(心身を労し、全力を尽して君主に仕える意)という『易経』の言葉によるという。