国民の縮図になっているか
世論調査と類似の調査は、インターネットでも頻繁に行われている。しかし、ネット調査は、特定のサイトを見ている人による偏った回答となりがちだ。大量の回答が集まっても、「ネットの声」がただちに国民一般の声をフラットに拾い上げ、縮図としたものになっているとは言えない一面がある。
大手メディアや公的機関の世論調査は「公正」「厳密」「科学性」にこだわる。担当者には専門知識を持つ人も多く、日頃から研究会などを通じてノウハウを蓄積し、担当者同士の横のつながりも深い。
それだけに、回収率の低下は頭が痛いと思われるが、「回収率が高いことはイコール品質が高いことではない点にも注意が必要だ」という指摘もある。
日経リサーチ・佐藤寧世論調査部長のコラム「世論調査のルール(3)回収率を高めること」によると、例えば、回収率を高めるため、1問だけでもいいからと強引に回答を得たのでは、回収率が高まったとしても、無回答が不自然に多い、偏ったサンプルになってしまう。また、比較的回答が得られやすい年配層からの回収に注力することで回収率を高めようとした場合には、年配層に偏ったサンプルになってしまう。
「調査の趣旨を調査員が丁寧に説明して調査対象者にご理解いただき、調査にご協力いただけるよう地道に努力することが重要になっている。この努力を怠ると、対象者は突然の電話でもご回答いただける無警戒な方の集団になり、結果が偏ってしまう」と指摘している。
社会の変化で、世論調査が難しくなる中で、いかにして品質を維持するか。佐藤氏は「自動音声応答通話(オートコール)を使った調査は、世論調査ではない」と言い切っている。
回答率が低くても、きちんと対象者が選定されていたら、精度の高い調査は可能ということなのかもしれない。デジタル時代になっても、世論調査は「人力」に頼る部分が大きいようだ。