3つの広報活動を中心に理解醸成図る
2045年に最終処分が完了するまであと約24年。理解醸成のため、環境省では主に3つの広報活動を行っている。1つ目は説明のための「コンテンツ作り」。例えば、福島県の現状や課題についてわかりやすくまとめた動画を制作している。環境省サイト上で公開されており、今回のフォーラム冒頭でも流された。
2つ目は今回も行われた対話フォーラムだ。
3つ目は「大学での理解醸成活動」。環境省と提携する大学約15校で、福島県の復興や課題に関する講義が行われている。また講義のみならず、学生同士で議論を行う「ワークショップ」も実施。今後は再生土壌の実証事業といった現地見学会も計画している。
大学での講義はもちろん、今回の対話フォーラムでいわゆる「Z世代」の登壇者も参加したように、若い世代への醸成活動にも力を入れている。
また、環境省では、放射線の健康影響に関する情報を正確に読み解くや判断力を身につける場を創出する「ぐぐるプロジェクト」という事業を21年7月から実施しているという。両親の被ばくが子孫の健康にも影響を及ぼすという誤った知識や風評を払拭するためだ。
川又氏によると「ぐぐるプロジェクト」の一環で、正しい知識を学べるセミナー「ラジエーションカレッジ」を開催予定で、現在参加者を募集している。同氏が取り組んでいる大学での理解醸成活動でも「ラジエーションカレッジ」と連携しつつ、復興の課題や放射線について「学んでいける大学をもっと増やしていければ」と考えている。
対話フォーラムのプロジェクトはまだ開始されたばかり。これまでの活動を通しての広報効果を聞くと、川又氏は「全体でいうと、まだまだこれから」と明かす。ただ、今回の対話フォーラムには一定の手ごたえがあったようだ。
「今回は『何か協力できることはないか』『ミニフォーラムを開きたい』『長泥の実証事業やボランティアには参加できるのでしょうか』など、課題活動に向けて自分が何をできるか考えていただいたとわかる(一般参加者からの)コメントがいくつも見られました。すごくうれしいことですし、このフォーラムを行ったかいがありました」
見学会や対話フォーラム、そして大学での講義を通して、問題について「知るきっかけ」を提供することが重要だと川又氏は考えている。今回のフォーラムに一般参加者から寄せられた積極的なコメントを振り返って、
「こうした活動を実施する意義があるのだと再確認できました」
と語った。