新型コロナウイルスのワクチンを2回接種したにもかかわらず、コロナに感染してしまう「ブレイクスルー感染」が全国各地で起きている。これまでは散発的だったが、このところ病院や介護施設での発生が相次ぎ、「クラスター」と認定されるケースも出ている。ワクチンを接種済みにもかかわらず、なぜ集団感染が起きるのだろうか。
福井県で32人
NHKによると、福井県は2021年9月22日、県内で41人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。このうち32人は越前市の介護老人保健施設の入所者や職員だった。全員が2回のワクチン接種を終えていた。福井県は、いわゆる「ブレイクスルー感染」のクラスターが発生したとみているという。
NHKによると、この施設では21日、職員1人の感染が確認されたことを受けて、入所者や職員など189人を検査した。70代から90代までの男女20人の入所者と、20代から70代までの職員12人の計32人の感染が確認された。
感染した人は、全員が優先接種の対象となっており、ことし6月ごろまでに2回のワクチン接種を終えていたという。
群馬県や北海道でも発生
FNNプライムオンラインによると、群馬県伊勢崎市の病院でも、ブレイクスルー感染のクラスターが発生している。
この病院では9月20日から22日までに、10代から80代の入院患者17人と職員8人のあわせて25人の新型コロナウイルスの感染が確認された。このうち24人は、ワクチンを2回接種し、2週間が経過してから感染が確認されたブレイクスルー感染だった。1人は1回接種していた。24人のうち、2人が中等症で、22人が軽症だという。
読売新聞によると、北海道旭川市の病院でもブレイクスルー感染が起きている。この病院では8月、リハビリ病棟の職員の感染が分かって以降、70~90歳代の高齢の患者やほかの職員の感染が次々と判明。計13人が感染するクラスターとなった。このうち8人がワクチンを2回接種済みで、うち7人が接種から2週間が経過していたという。
12月からブースター
今回のブレイクスルー感染の特徴の大きな特徴は、ワクチンを接種済みの集団で、クラスターが起きているということだ。抵抗力の弱い入院患者や高齢の入所者だけでなく、職員らも感染している。ある集団に対し、ひとしくワクチンの効果が弱まっている。
ワクチンはもともと100%の効力を持つものではなく、ファイザー社などの調査でも、2回の接種から時間がたつと効果が薄れるとされている。
日本では、医療従事者へのワクチン接種は3月ごろから、高齢者への接種も5月ごろから始まっている。個人差はあるが、早めに接種した人ほど、ワクチン効果は落ちやすい。
朝日新聞によると、厚生労働省は9月22日、「ブースター接種」と呼ばれる新型コロナウイルスワクチンの3回目接種(追加接種)について、自治体向けのオンライン説明会を開き、今年3~4月に2回目の接種を受けた医療従事者ら104万人について、早ければ12月に追加接種するという想定を示した。高齢者らの接種は年明けからの見通しで、自治体に準備を求めたという。
全国の感染者数は減少し、緊急事態宣言は解除の見通しだが、油断せずに感染予防を続ける必要がありそうだ。