国際ニュースで「デフォルト」という言葉を聞くことが多くなってきた。中国の巨大不動産会社「恒大集団」がデフォルトに陥るのではないか、というのだ。この場合のデフォルトは、「債務不履行」のこと。しかし、デフォルトには、いくつもの意味がある。使われる局面やジャンルによって、概念が全く異なる珍しい言葉だ。
サッカークラブでも知られる
ブルームバーグは2021年9月20日、不動産開発大手の中国恒大集団について、デフォルト(債務不履行)となる公算が大きくなっているというニュース報じた。
恒大集団は、不動産開発を中核事業とする中国の複合企業。1996年に会社を設立してから、猛スピードで事業を拡大してきた。
21日の時事通信によると、不動産では中国内最大手。傘下にプロサッカークラブの広州FC(旧広州恒大)も抱える。多額の借り入れと積極的な開発用地の取得を通じて急成長したが、6月末時点の負債総額は1兆9670億元(約33兆3000億円)に膨らんだ。政府による不動産業界向け融資の引き締めをきっかけに資金繰りが急速に悪化したという。この記事でも、同社の「デフォルト(債務不履行)の懸念が高まっている」と報じられている。
大きな経済危機、経営危機になると、「デフォルト」という専門用語が頻発する。不安感が増すので、あまり聞きたくない言葉だ。1980年代ごろまでは、日本ではデフォルトと言えば、たいがいこの「債務不履行」のことだった。
パソコンの普及で新たな意味
ところが90年代中頃になって、パソコンが広まったことで、新たな意味が知られるようになる。
マイナビが運営する学生のための社会人準備サイト「学生の窓口 フレッシャーズ」が、「今さら聞けない!デフォルトの意味」について解説している。
それによると、一つ目は、むかしながらの「債務不履行」の意味。二つ目は、「初期設定値」。スマホやソフトなどの初期設定値のこと指す。各種マニュアルなどでおなじみの言葉だ。これから転じて、「定番」「普通」「標準」という三つ目の用法が使われるようになったという。最近では、「彼は遅刻がデフォルト」などという言い方も一般化している。短縮して「デフォ」と言うこともある。このサイトでは、「ビジネス用語で使う場合は、金融とそれ以外では意味合いが異なりますので注意しましょう」と念を押している。
上記のようにデフォルトには、「不履行」という意味が原意としてあり、そこから「実行しない→何もしない→初期設定のまま」という用法も生まれてきたようだ。
今ではたいがいの国語辞典に、「不履行」と「初期設定」の両方の意味が掲載されているが、少し前までは「不履行」しか載っていなかった。『大辞林』1993年版には「初期設定値」は掲載されていない。世間一般に広まったのは、それ以降のようだ。