欧米などは警戒
中国の新型コロナワクチンは、「シノファーム」「シノバック」「カンシノ」がWHO(世界保健機関)で承認されているのに、なぜさらに新たなワクチン開発を続けているのか。
その理由や現況については、日本貿易振興機構(ジェトロ)の2021年8月4日付レポート「中国製ワクチンの海外展開を読み解く」が詳しい。
それによると、中国はワクチンを世界的な「公共財」ととらえ、開発したワクチンを国内への供給だけでなく、海外へ積極的に提供する意思があることについても早期から言及。中国外務省は2021年7月12日の記者会見で、「中国は100を超える国と国際機関に対し、5億回分以上のワクチンとその原液を提供した。これは全世界の新型コロナワクチンの総生産量の6分の1にあたる」と説明している。
中国は「一帯一路」のパートナーシップ関係において、ワクチン協力を重要なテーマの1つとして取り組む方針を示しているが、実際にはそれ以上に多数の国に供給を続けている。
コロナ禍が続く状況の中で、今後、中国から海外向けの供給が拡大するとみられ、生産増に力を入れ続けている。中国の大手製薬会社「上海復星医薬集団」は独ビオンテック社の株を持ち、ワクチンの中独合弁事業に着手している。ほかにも、さらなるワクチンの開発や製造に取り組んでいる企業は少なくないようだ。
ジェトロのレポートは、「途上国での中国製ワクチンの普及について、欧米など諸外国は、中国の影響力の高まりと捉え、警戒する向きが強い。この点については、ワクチンを必要とする途上国の個別の事情を踏まえながら、注意深く観察する必要もあるだろう」と結んでいる。