iPadでUSB-C使えるのはなぜ
石川氏は、iPhoneがLightningの採用を続ける理由の1つとして「安全性を考慮」しているのではないかと推測した。他社スマホやパソコンに浸透しているUSB-Cは、電流・電圧といった仕様がアップルの規定と異なるケーブルも多く、粗悪品も存在する。アップルの端末規格に合わないものを使うと、本体の損傷や火災につながる恐れがある。
他方、iPadシリーズは音楽や動画制作に用いるクリエイターが多く、カメラやハードディスク(データ保存装置)といった周辺機器と接続して使われることもアップルは想定している。クリエイターにとってのデータ転送の速さや、対応機器の多さというメリットを重視し、USB-Cを導入しているのではないかと分析した。
iPhoneはiPadよりもユーザーが多く、より幅広い場面で使われると考えられる。さらに、iPadとは異なり防水にも対応している。それだけに水場で使用され、端子が濡れたままユーザーが充電してしまう可能性がある。濡れたままアップルが規定していないケーブルで充電されたら、事故のリスクは高まる。「だから、iPhoneは充電に関するコントロールがより必要なのだと思います」(石川氏)。
そしてTouch ID。iPhoneの電源ボタンは「サイドボタン」として端末の右側面にあるが、ここに指紋認証センサーを搭載できないのか。
石川氏は、サイズが小さいiPhoneの電源ボタンに性能の高い認証センサーを搭載するのは技術的に難しい可能性を指摘した。
iPhoneとiPadの使い方の違いも、背景にあるかもしれない。石川氏によると、サイズの大きいiPadシリーズは両手で使う人が多い。両手で操作していると、Face IDに使う内側の「インカメラ」をふさいでしまうことがあるという。Touch IDなら、右手でセンサーに触れて認証しやすい。
半面、片手でよく使われるiPhoneのサイドボタンにセンサーを埋め込むと、左手では認証しづらいなど、普段右手で使うユーザー・左手で使うユーザーの間で使用体験に「差」が生まれるという。この差を避けることを意識して採用しなかったことも考えられるとした。