日本は「安い」「貧しい」「転落する国」 厳しい評価の本が続出する背景

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   日本の近況や現状について「安い」「貧しい」「小国」「後進国」などと評する本が目立っている。著者はいずれも経済ジャーナリストや経済評論家、経済学者など。

   今や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だった時代は遠い昔の話になった。経済は伸び悩み、給料もほとんど上がらない状態が続く。コロナ・ワクチン開発でも欧米や中国に大きく遅れただけに、反響があるようだ。

  • 日本の今に厳しい視線が向けられた
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賃金も安い国

   『安いニッポン――「価格」が示す停滞』(日経新聞出版、2021年3月刊)は日経新聞連載をもとに書籍化している。


   日本の物価が世界的にみて安いということを強調すると同時に「日本の初任給はスイスの3分の1以下」「日本の30歳代IT人材の年収はアメリカの半額以下」など、日本が賃金でも安い国になっていることを教える。経済に詳しい日経新聞の指摘だけにインパクトがあり、他メディアで紹介される機会も多い。アマゾンの「企業・経営」部門1位。すでに6刷7万部を突破している。

   同じような視点で日本を分析した本に、経済評論家、加谷珪一さんの一連の著作がある。『日本はもはや「後進国」』(秀和システム、2019年12月刊)、『貧乏国ニッポン――ますます転落する国でどう生きるか』 (幻冬舎、20年5月刊)、『日本は小国になるが、それは絶望ではない』(KADOKAWA、20年10月刊)と続く。

   今や日本は「後進国」「貧乏国」「小国」であり、そのことを自覚してどう生きるかということを問いかけている。「1989年に1位だった世界競争力ランキング、2019年は30位」などデータも豊富。著者は日経BP記者を経て、ファンド運用会社で投資業務なども経験している。経済の実態に明るいので説得力がある。


「規制緩和」が拍車

   日本はいつからダメになったのだろうか。そのことをテーマにしているのが経済評論家、森永卓郎さんの『なぜ日本だけが成長できないのか』(角川新書、18年12月刊)だ。森永さんによれば、「日米同盟」の名のもとに、長い時間をかけて日本は米国に叩き売られてきたのだという。

   世界のGDP(国内総生産)に占める日本のシェアは、1995年には17.5%に達していた。しかし、その後は転落を続ける。2010年には8.6%、16年には6.5%まで落ち込んだ。この日本空洞化は3段階で進み、最終段階の「規制緩和」が拍車をかけたと見る。森永さんはテレビで見ている限り温和な印象だが、本書はなかなか手厳しい。

   著名な経済学者、野口悠紀雄さんの『平成はなぜ失敗したのか』(幻冬舎、19年2月刊)も同じような視点に立つ。平成は、日本経済にとって「失われた30年」だったと分析。それも、「努力したけど取り残された」ではなく「大きな変化が起きていることに気づかなかったために取り残された」と見る。


   経済学者、金子勝さんの『平成経済 衰退の本質』(岩波新書、19年4月刊)も、衰退の源流を平成、さらにはそれ以前の「日米半導体交渉」にまでさかのぼっている。金子さんは10年に、児玉龍彦・東京大学先端科学技術研究センター名誉教授と共著『新興衰退国ニッポン』 (現代プレミアブック)を出版、早々と「日本の衰退」を指摘している。児玉さんはコロナ問題の論客としてテレビで見かける機会も多い。

自民・岸田文雄氏の主張

   女性の著作では、経済ジャーナリスト、荻原博子さんの『私たちはなぜこんなに貧しくなったのか』(文藝春秋、21年8月刊)がある。庶民の視点で、日本人のお金の問題を取り上げてきた荻原さんによれば、平成とは「庶民が政府に騙され続けた歴史」だった。その象徴が「消費税」だったという。


   少し前の作品では、硬派のジャーナリスト、堤未果さんの『日本が売られる』(幻冬舎新書、18年10月刊)が有名だ。日本の水や土、タネ、牛乳、農地、森、海などが安いので外国資本に目を付けられ、いつのまにか買い取られている現状を報告、20万部超のベストセラーになった。

   堤さんは最新作『デジタル・ファシズム』(NHK出版、21年8月刊)でも、デジタル改革という掛け声のもと、「日本が丸ごと外資に支配されるXデーが、刻々と近づいている」と訴えている。アマゾン、グーグル、ファーウェイをはじめ米中の巨大テック資本が、行政、金融、教育など日本の「心臓部」を狙っており、このままでは「日本の資産と主権が消える」と警告している。

   日本が「安い」「貧しい」ということは今回の自民党総裁選でもテーマになっている。候補者の一人、岸田文雄氏は「成長と分配の好循環による日本型の資本主義を構築すべきだ」と主張し、中間層の拡大に向けて「『令和版所得倍増』を目指す」ことを唱えている。

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