虫に好かれる人 高田聖子さんはハッカ油で武装するもハエに降参

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妄想の続き

   「大人のおしゃれ手帖」は宝島社が出しているライフスタイル誌で、主な読者層は40代から50代の女性。そのまん中にいる54歳の高田さんは、古田新太さんらの「劇団☆新感線」に所属する。同誌での連載は62回を数え、もはやエッセイストと呼んでもいい。

   ハッカ油の除虫効果は知られた話だろう。作品は実用的な序盤から、なにやらミステリアスな後半へ、主役を蚊からハエに代えてぐいぐいと展開してゆく。

   「まさかこんな所にという路地裏にその魚屋さんはあった」というくだりは、初めて足を踏み入れる異界を想像させる。そこには老店主と大量のハエが一定のルールの下に「共生」していて、訪れる客を困惑させる...そんな設定の空想小説のようでもある。

   「それともお爺さんの背中にびっしり隠れるだろうか」という結末が、〈ハエを自由に操る店主〉という私の勝手な妄想をかきたてる。蛇足ながら「短編」の続きを考えたくなった。

   後日、主人公はハッカ油で完全武装のうえ出直す。すると、その店は跡形もなく消えていた...そんな感じで如何でしょう。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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