妄想の続き
「大人のおしゃれ手帖」は宝島社が出しているライフスタイル誌で、主な読者層は40代から50代の女性。そのまん中にいる54歳の高田さんは、古田新太さんらの「劇団☆新感線」に所属する。同誌での連載は62回を数え、もはやエッセイストと呼んでもいい。
ハッカ油の除虫効果は知られた話だろう。作品は実用的な序盤から、なにやらミステリアスな後半へ、主役を蚊からハエに代えてぐいぐいと展開してゆく。
「まさかこんな所にという路地裏にその魚屋さんはあった」というくだりは、初めて足を踏み入れる異界を想像させる。そこには老店主と大量のハエが一定のルールの下に「共生」していて、訪れる客を困惑させる...そんな設定の空想小説のようでもある。
「それともお爺さんの背中にびっしり隠れるだろうか」という結末が、〈ハエを自由に操る店主〉という私の勝手な妄想をかきたてる。蛇足ながら「短編」の続きを考えたくなった。
後日、主人公はハッカ油で完全武装のうえ出直す。すると、その店は跡形もなく消えていた...そんな感じで如何でしょう。
冨永 格