「心のノート」という教材を知っているだろうか。文部科学省が2002年から全国の小中学校へ向けて配布してきたノートで、「道徳の時間」での活用を目的としていた。
1995年以降に生まれた世代なら、なじみ深いかもしれない。この「心のノート」、実はもう配布されていない。
「気持ち」を書き込める
文部科学省公式サイトによると、「心のノート」は、「児童生徒が身につける道徳の内容をわかりやすく表し、道徳的価値について自ら考えるきっかけ」となる教材。何かを頑張ったときの気持ちを書く欄など、児童が自分で書き込めるさまざまな記入スペースを設けている。
J-CASTトレンドは、文科省・初等中等教育局教育課程課に取材した。もともと道徳は正式科目ではなく、「道徳の時間」として1958年から小中学校の教育課程に追加された。特定の教科書は設けられず、授業内では教師による説話や映像資料など、さまざまな教材が自由に活用された。
その後、道徳の時間に使える教材の新たな選択肢として、文科省主導で「心のノート」を製作。授業での使用義務はないものの、児童の心の成長の振り返りや、家庭内での保護者とのコミュニケーションでの活用を想定し、2002年から毎年全国の小中学校への配布を開始した。
「道徳」の正式科目化で...
2013年、いじめ問題などについて検討する「教育再生実行会議」の中で、道徳の正式教科化や、さらに効果的な道徳の指導方法が提言された。これを受けて「心のノート」も全面改訂。翌14年からは「私たちの道徳」に名前を変えて、新たに配布されるようになった。
小学校では2018年、中学校では19年から道徳が正式科目化された。これに伴い、授業に使う「検定教科書」が教育課程に定められた。出版社が発行し、文科省が教科書として認定する図書だ。主教材として新たな教科書が使われるようになったため、「心のノート」「私たちの道徳」は配布されなくなったのだ。
東京都豊島区の小2男児、杉並区の小4女児、神奈川県川崎市の小3男児それぞれの親に取材すると、いずれの子も、「心のノート」「私たちの道徳」どちらも知らなかった。
ただ、「心のノート」「私たちの道徳」は現在も文科省サイト上で全ページが公開されている。教材として教育課程に定められてはいないが、授業用にプリントとして自由に印刷し、教科書と組み合わせての活用を想定しているという。文科省教育課程課の担当者は、「心のノート」「私たちの道徳」が完全に小中学校で使用されなくなったかは「分からない」と話した。