プロ野球・中田翔選手。北海道日本ハムファイターズ在籍時に同僚への暴力行為を行い、2021年8月11日に無期限出場停止処分が下されていた。だが読売ジャイアンツが20日に獲得すると、翌21日にはもう1軍の試合に出場した。
出場停止処分が、移籍でなし崩し的に解除か――インターネット上では疑問の声が上がっている。中田選手への待遇は「甘い」のか、類似の例と比較した。
山口俊はシーズンを棒に振る
2005年5月5日、中日ドラゴンズのタイロン・ウッズ選手は試合中に相手選手を殴打した。同日、制裁金50万円と翌6日からの出場停止10試合の処分が球団から課された。公式戦に復帰したのは同年5月18日だ。当時の報道から、重い処分だったことがうかがえるが、死球ほかプレーをめぐる暴力、処分はほかにもある。
グラウンド外での暴力トラブルとしては、最近では巨人・山口俊投手の例がある。2017年8月19日付スポーツ報知(電子版)によると、同年7月11日未明に東京都内の病院で男性警備員に全治2週間の打撲を負わせた疑いと病院内のドアを破損させた疑いにより、8月18日に書類送検された。
被害者と示談が成立し、被害届は取り下げられたものの、8月18日からシーズン終了(11月30日)までの出場停止に加え、罰金・減俸処分を下された。
一方の中田選手。日本ハムの発表によると、8月4日の横浜DeNAベイスターズとのエキシビションマッチの開始前、同僚選手ひとりに暴行。試合中に球場からの退場と自宅謹慎を命じられた。
被害選手からは「本件を大事にしたくない旨の申告」があったとしつつ、8月11日に「当面の間」を期間として一軍・ファーム全ての試合で出場停止処分となった。しかし20日に巨人へトレード移籍し、日本ハムは同時に処分解除を発表。21日には1軍戦に出場した。処分期間は計10日間だ。
「処分なきに等しい」
J-CASTトレンドがスポーツライターの小林信也氏に取材すると、中田選手の処分期間は「短いでしょうね」と指摘した。
ただ、山口投手やウッズ選手のケースとは単純に比較できないという。この2~3年間で暴力といった不祥事に対する社会のコンプライアンス(法令順守)意識は、以前より高くなったからだ。こうした情勢の中、出場停止決定後10日で出場しているのは「処分なきに等しい」と断じた。
「(中田選手を)巨人がとってくれると分かった途端に(日本ハムが処分を)撤回した。そこが非常に不可解」
こうした事態が起きた背景には、「野球界全体がコンプライアンスや選手の風紀に対して非常に甘い」ことが挙げられると小林氏。選手に不祥事があっても、試合で「結果が出れば良しとする体質」やコンプライアンス意識の低さが何年にもわたって存在すると語った。
山口投手のケースでは、出場停止処分はシーズン終了まできっちりと課された。暴行の被害者が「第三者だったから」ではないかと、小林氏は推測した。相手はプロ野球関係者ではなく、対外的な事件だったことが、処分の重さにつながった可能性を示唆した。
対して、中田選手の場合はチーム内の事件だったことが処分の軽さにつながっているのではないかと分析。暴行の経緯・詳細は明かされておらず、「隠ぺいしたと言われてもしょうがない」とした。