新型コロナウイルスの感染拡大で2021年8月25日、緊急事態宣言の対象が21都道府県に広がった。中でも深刻なのが沖縄だ。
しかし、あまり報道されていないが、東京23区の中にはすでに沖縄以上とも言える感染状況のところが少なくない。
渋谷区、港区...都心に多い
コロナ発生以来の全国都道府県の感染者数は、絶対数では東京が1位、2位が大阪だ。しかし、人口10万人当たりで計算すると沖縄の感染者が2658人でトップ、東京は2307人で2位になる。
東京は、地域によってかなり感染者数が異なる。都心区が多く、西部の三多摩は少ない。
東京新聞のビジュアルデータサイト「東京都内の新型コロナ感染状況まとめ」には都内自治体の人口10万人あたりの感染者数が出ている。8月25日現在で最も多いのは、新宿区で、人口10万人あたり4476人。続いて渋谷区3683人、港区3507人。このほか目黒区、中野区も3000人を超え、豊島区、中央区などがまもなく3000人台に入る。
沖縄は県全体のデータであり、23区と単純比較はできないが、東京では繁華街や歓楽街を抱える区で感染者の比率が高いことがわかる。
新宿区の人口に対する感染者の割合は4.48%。約22人に1人という高率になっている。
窓口業務が中心の部署
都内各区のウェブサイトには、公的施設に関連する感染情報が掲載されている。
8月に入ってからの状況をみると、新宿区では区役所内で多数の感染が出ているのが目立つ。公表分を見ると、「税務課」「介護保険課」「生活福祉課」「医療保険年金課」「保護担当課」など区役所各課の名前が切れ目なく並ぶ。複数の感染者を出している課が多い。
特に際立つのが「戸籍住民課」だ。合計10人以上の感染者が出ている。窓口業務が中心で、来訪者との接触も多い部署だけに、もっと詳しい情報を知りたいと思う区民もいるに違いない。
新宿ではデパートなどの大型商業施設などでも感染が多発しているが、そうした民間の状況は区のサイトではわからない。
学校観戦取りやめた区も
同じように渋谷区のサイトを見ると、区立の「通所介護施設」「訪問介護事業所」「障がい者福祉施設」などで頻発していることがわかる。職員や利用者の感染が、ほぼ毎日のように発生している。
港区では「保育施設」「子育て関連施設」が突出している。8月に入ってから、こちらもほぼ毎日、合わせて数十件発生している。保護者にとっては不安が募る。
港区はパラリンピックの「学校観戦」を予定していたが、方針が二転三転、最終的に24日夜、取りやめている。
自治体ごとの感染状況の公表は、全国でかなりの落差がある。
大阪市のサイトを見ると、「新型コロナウイルス感染者数を区ごとに公表してほしい」という「市民の声」が掲載されている。
市側の回答として、「感染情報の公表に関しては、感染症法において、感染源を明らかにし、国民にリスクを認知してもらう一方で、感染者等に対して不当な差別・偏見が生じないよう十分に留意すべきことが定められております」「行政区ごとの感染者数を公表することにつきましては、行政区ごとの感染者数の多寡により、不当な差別・偏見につながる恐れがあると考えられているため、慎重に検討してまいりたいと考えております」(2020年11月30日付)が掲載されている。