東京五輪の開会式では、ドローンが華麗なショーを見せて多くの人々を魅了した。しかしドローンにはもう一つ、「兵器」としての裏の顔がある。
その実験・実践場となり、兵器としての威力を見せつけてきたのがアフガニスタンの内戦だ。政府側を支援する米軍は、早くからドローンに注目し、活用してきた。しかし、20年にわたる戦争は結局、反米・反政府勢力のタリバン側の勝利でほぼ決着した。
まるでテレビゲーム
ドローン戦についての報告は、『ドローン情報戦――アメリカ特殊部隊の無人機戦略最前線』(原書房、2018年刊)が詳しい。実際にドローン戦争を担ってきた元米軍人の回想録だ。機密に触れる部分が多いので、刊行前に米政府によって入念なチェックを受けたという。
著者のブレット・ヴェリコヴィッチ氏は10年以上にわたってテロ対策と情報分析活動に従事した軍用ドローンの専門家。米陸軍特殊部隊DELTAのドローン技術者・情報分析官として、アフガニスタンやイラクなど、対テロ戦争の最前線を経験してきた。
初めてドローンに触れたのは2005年、最初の任地、アフガニスタンに赴任したときだったという。やがてドローンのエキスパートになり、ターゲットを選んで殺害できる権限を付与された。
同書では著者が体験してきた幾つもの「実戦」の様子が再現されている。まるでテレビゲームだ。とはいえ著者は、殺害を決める最終段階では必ず迷った、と書いている。「人違いだったらどうする?」。