デルタ株「厳戒態勢」すり抜け中国に侵入 暑い夏向け「珍マスク」バカ売れ

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【連載】浦上早苗の「試験に出ない中国事情」

   入国者はホテル客室隔離3週間、感染者が出ると即エリア封鎖など、非常に厳しい感染防止対策で、新型コロナウイルスをほぼ封じ込めてきた中国が、デルタ株の流入を許し感染拡大の危機に直面している。

   厳戒ムードが強まる中、久しぶりにマスクの着用を求められた人々の間では、暑さをしのぐための「神器」がバカ売れしている。

  • 南京市で2021年8月2日に行われたPCR検査の様子(写真:AP/アフロ)
    南京市で2021年8月2日に行われたPCR検査の様子(写真:AP/アフロ)
  • 南京市で2021年8月2日に行われたPCR検査の様子(写真:AP/アフロ)

五輪選手団も隔離中

   世界最初にパンデミックが起きた武漢市の封鎖を2020年4月に解除して以来、中国は感染者が出たら即エリア封鎖、周辺住民の一斉PCR検査など日本人目線では狂気に近い封じ込め策で、感染拡大を抑え込んできた。1日の感染者が全国で2ケタにとどまっていた中でも、今年春からは多くの地域で入国者の3週間ホテル隔離(施設どころか客室から出られない)を実施し、東京五輪を終えて帰国した中国選手団も目下隔離中だ。

   だが7月下旬、デルタ株が厳戒態勢をもすり抜け、中国に上陸した。7月20日、江蘇省南京市の空港職員の感染がPCR検査で判明し、8月11日までに江蘇省全体で734人の感染が確認された。また、南京の空港利用者関連と思われる感染者は、全国で約1000人に上っている。

クラスター地域の外出は「3~5日に1度」

   当局はこれまた狂気の追跡で、感染源を特定した。南京市の発表によると7月10日のロシアからのフライトで、航空機を清掃していたスタッフが防護服の洗濯・着脱ルールを徹底しなかったことから感染が広がったという。8月9日までに南京市で確認された感染者のうち3分の1は、空港の清掃スタッフだった。

   同市は空港の感染防止対策に「緩み」があったとし、運営会社のトップなど5人を外し監察の調査にかけることを決めた。また、南京市に近い揚州市でも数百人のクラスターが発生しており、同市は感染拡大エリアの住民の外出を3~5日に一度に制限。自宅にこもってもらう代わりに生活手当を支給している。

「神器」はウイルス防げない

   デルタ株の感染が全国に拡散していることを受け、衛生当局は国民にマスクの着用を呼びかけている。昨年の夏は中国では感染がほぼ出ていなかったため、猛暑でのマスク着用は初めての人も多い。そのため、通気性を高めるフレームや涼感ジェルといった「マスク神器」が7月末からバカ売れしている。

   ECサイトで「マスク」「神器」で検索すると、大量の商品がヒットし「つけるだけで(中国がN95規格相当の防塵効果があると認定する)KN95級の品質にグレードアップするフレーム神器」「日本品質神器」なども現れる。

   だが、マスク神器の大流行に対し、広東省の衛生当局は「暑さを防ぐ神器は、ウイルスを防ぐ神器にはならない」と注意を喚起。「マスクは感染防止の重要な防御線であり、中にフレームを入れるとすき間ができて最近やウイルスを防げない恐れがある。人が多い場所では暑くてもマスクを正しく着用して、蒸れたら交換して」と呼びかけている。

浦上早苗
経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。「中国」は大きすぎて、何をどう切り取っても「一面しか書いてない」と言われますが、そもそも一人で全俯瞰できる代物ではないのは重々承知の上で、中国と接点のある人たちが「ああ、分かる」と共感できるような「一面」「一片」を集めるよう心がけています。
Twitter:https://twitter.com/sanadi37
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