開戦2日前、東條首相は号泣
3氏にはそれぞれ、代表的な著作がある。半藤氏の『日本のいちばん長い日』は、「昭和20年8月15日」直前の、緊迫した24時間を徹底した取材で再構成する。「ポツダム宣言受諾」は粛々と行われたのではなく、「玉音放送」を阻止しようとする徹底抗戦派のクーデター未遂事件など、今日の常識では考えられないようなことが日本の中枢部で起きていたことをリアルに描いた。2度も映画化されている。
加藤氏の『それでも日本人は「戦争」を選んだ』は09年刊行。10年には小林秀雄賞を受賞。16年には新潮文庫に入り、ロングセラーとなっている。大きな特徴は、日本が対米戦争を「必然」としてかなり前から準備していたことを指摘していることだ。1923年には、陸海軍ともに米国が想定敵国の第一とし、シミュレーションを重ねていたと明かす。神奈川県の私立栄光学園の中高生に5日間の特別講義した内容をもとにしている。生徒たちとの質疑応答などもあり、わかりやすい。
多数の戦争関係者と会ってきた保阪氏の著作には、意外なエピソードが多い。『昭和の怪物 七つの謎』には、開戦2日前の1941年12月6日、東條英機首相が官邸の一室で皇居に向かって正座し、号泣していた話が出てくる。その姿を東條夫人がそっと襖を開けて目撃していたという。保阪さんの取材に夫人自身が明かした秘話だ。