はみ出し人生 ジェーン・スーさんは「普通の上位」を目指したが

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妹たちの参考に

   ジェーンさんは48歳。あれこれはみ出した彼女が、作詞家や文筆業、ラジオパーソナリティーとして頭角を現していく経緯は次回以降のお楽しみだ。はみ出しながらも「仕切ったり、まとめたりするのが上手」という評価が身を助けたらしい。

   文中「年を経るごとに、はみ出す要素がどんどん増えていく」という述懐がある。小中高から大学、社会人になる過程で、それだけ理想やら定型やら模範解答が積み重なっていくのだろう。出産を選んだ女性のキャリアは、同世代の男性よりかなり複雑になる。

   「未婚のプロ」を自称するジェーンさんの場合、結婚や出産に絡んだ悩みは少なかったかもしれない。しかし、安心感(普通)と自尊心(特別)の折り合いは自分で、独りでつけるしかなかった。留学後、再び日本サイズの箱に体を押し込み、ジメジメした感情も表には出さず、音楽業界で働き始めるジェーンさん。30代半ばまでは「女性会社員」を続けたが、結局は小さな箱を破り出て、クリエーターの世界に移っていく。

   才能あってこそと言えばそれまでだが、往時の苦悩を明かしながら綴る「はみ出し人生」は読み応えがある。「普通」と「特別」の間で揺れ動くビジネスウーマン、すなわち「妹たち」にも、何かと参考になるに違いない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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