戦前は「戦争への行進」
1940年東京五輪と2020年東京五輪。同じく予定が狂ったとはいえ、二つの東京五輪には大きな違いがある。40年の五輪は、出場するはずだった選手たちが召集され、兵士として戦い、戦死した。命まで捧げることを強いられた。
64年の五輪閉会式の会場となった国立競技場は、戦前の明治神宮外苑競技場。43年には学徒出陣の壮大な式典が行われた場所でもあった。松澤はそのとき観客席にいて、教え子たちが行進する姿を見送った。何もすることができなかった。
戦前、「戦争への行進」として使われたその場所を、松澤は64年の東京五輪の閉会式で、国籍も肌の色も関係ない「平和の行進」の場としてよみがえらせたのではないか――。NHKスペシャル取材班はそう推測している。
コロナ禍で「密」を避けることが強いられている今回の東京五輪。果たして「平和の行進」はあるのだろうか――。