東京五輪閉会式「コロナ禍」での演出 64年大会で始まった「平和の行進」あるか

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ハプニングは作られていた

   天皇皇后が出席された64年の閉会式。本来は、整然と厳粛に行われる予定だった。ところが五輪が始まり、終盤に近づいたある日、スタッフのミーティングで、記録映画の撮影を担当している市川崑監督が突然、「もっとくだけた、各国選手が互いに打ち解けたような、競技を終えてリラックスした選手の姿を撮りたい」と注文をつけた。奇想天外な演出は考えられないか、と言い出したのだ。

   賛同の声はなかったが、その様子を黙って聞いていた松澤が一計を案じた。数人のメンバーにのみ、隠密計画を伝えた。

   閉会式当日、選手たちは入場口の外で整列する。その列が乱れないように、各国選手団の間にロープが張られる。20メートルほどのロープは、鉤型フックのついたポールに引っ掛けて張られている。そのフックを直前にはずそうというのだ。さすがにメンバーの一人は、本番で実行するとき手が震えたという。結果は、大成功だった。

   公式的には「ハプニング」とされたが、実は意図して行われたものだった。

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