尾身茂会長は知らなかった
今回の混乱で、多くの国民があきれたことはもうひとつある。政府の新方針を、当該政府関係者が知らず、自民党など与党からも批判を浴びて修正されたことだ。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は4日の衆院厚生労働委員会の閉会中審査で、入院対象者を重症者らに絞り込む政府方針について、「政府とは毎日のようにいろいろなことで相談、連絡、協議しているが、この件に関して相談、議論したことはない」と述べた。
尾身氏は、重要な政府関係者。専門家として政府のコロナ対策に関しアドバイスする立場なので、国民にはわかりにくい。さらには政府判断に対し、与党の自民党や公明党からも強い批判が出たことも異例だった。
6日の日経新聞は、コロナ対策で政府方針がひっくり返った例として、7月に西村康稔経済財政・再生相が、緊急事態宣言下で酒類を出す飲食店に金融機関からの働きかけを求めた一件を挙げている。与党が耳身に水ということで撤回を強いられた。
同紙は菅政権の「調整役の不在」を挙げ、「対策が調整不足で二転三転する間に感染拡大がさらに進む」と指摘。朝日新聞は厚労省幹部に取材し、感染急拡大で、与党幹部や日本医師会、専門家への根回しが十分に行われないまま当初の方針発表が見切り発車で行われた、と書いている。
全体の「司令塔」となる菅義偉首相は6日の広島平和記念式典のあいさつで、原稿の重要な部分を読み飛ばす失態があった。産経新聞によると、原稿の1ページ分を読み飛ばしたという。NHKは式典を生放送し、首相あいさつを字幕表示していたが、途中で中断したという。