「100日間生きたワニ」は失敗作か 4週間で上映終了...映画ライターの評価は

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   映画「100日間生きたワニ」は、公開から約1か月たった2021年8月5日、東宝シネマズなど多くの劇場で上映が終了した。ツイッターやインターネット掲示板には、終わるのは早い、赤字なのでは、との書き込みが目立つ。

   封切り当初から、豪華声優陣による舞台挨拶の回以外は空席が目立つとの指摘があった同作。J-CASTトレンドは、映画ライターのよしひろまさみち氏に取材。映画の上映期間と利益について、評価をたずねた。

  • 「100日間生きたワニ」は失敗だったのか(画像は映画公式サイトより)
    「100日間生きたワニ」は失敗だったのか(画像は映画公式サイトより)
  • 「100日間生きたワニ」は失敗だったのか(画像は映画公式サイトより)

声優のギャラ、実は...

「(上映期間1か月で終了は)珍しくもなんともない。しょっちゅうあることです」

   よしひろ氏は、こう話す。

   日本では、ここ20年で複数の映画を同時上映できる複合型映画館「シネマコンプレックス」(シネコン)が主流になった。どの作品を何時に何回上映するかは、シネコン側が自由に決められる。当然、収益性が高い映画は長く公開するが、そうでないものはさっさと打ち切る。中には公開から1~2週間で終わる作品もあるという。

   「100日間生きたワニ」は「もともと上映期間を長く設けようとはしていなかった作品」と、よしひろ氏は作品の傾向と上映のタイミングから推測する。

   まず、傾向。上映時間が63分と非常に短い。さらに、制作費もあまり高額ではないだろうとみる。声優陣は豪華だが、声優の収録はだいたい1~2日と拘束期間が短いためギャラも安いそうだ。

「ほぼ短編の尺(映像の長さ)で、そんなに費用もかかっていなければ、そこまで稼ごうという気も最初からないんです」

公開終了は計画されていた?

   次に、上映のタイミング。同作品は、当初ゴールデンウイーク後の2021年5月28日に公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響により7月9日に延期された。夏休みシーズン直前だ。

「本当にヒットさせたい、もうけたい作品は、人が集まる連休中に公開を合わせてきます」

   例えば夏休みには、親子で見に行く前提の作品が最優先で公開になる。

   新型コロナの影響もあった。緊急事態宣言で半年程度劇場が閉鎖し、多くの作品が公開延期になった。「いま、公開待ちの作品が大渋滞。この先も東宝系でプライオリティーの高い作品が続々控えています。順番からいって、『100ワニ』を落とす(終了する)しかない」。ただ、先述の通り同作は最初から公開期間を長く予定しておらず、このタイミングでの上映終了はあらかじめ計画されていたのではないかとの見方を示した。

   ツイッターには「もう上映が終わるのか」と皮肉めいた書き込みもある。よしひろ氏は、「すぐに公開が終了する作品はほかにもたくさんあるので、100ワニだけ叩かれるのは、本当に心外」と話した。

大赤字を出す作品は企画通らない

   映画が公開すると「空席だらけ」とツイッターで話題になった。これは、赤字ではないか。配給会社は具体的な数字を公表していないが、よしひろ氏は「おそらく元は取れている」と推測する。

   同作品は全国公開で、上映する劇場数が多かった。上映の規模が大きいほど、たとえ席が埋まらなくても、利益はある程度は見込めるという。

   通常、上映時間が短い作品は特別鑑賞料金が設定され、値段が安い。しかし、同作品は63分だが通常料金の1800円だ。これなら、利益のめどは立つそうだ。そもそも日本の映画鑑賞料金は、世界的に見ても高い。そのため「日本映画で大赤字の作品は、それほどない」とよしひろ氏は明かす。とくに、東宝の作品は利益面で計算されたものばかりで、大赤字を出すような作品は、まず企画の段階で通らないとのこと。

「100ワニも路頭に迷うほど赤字は出ないはず」

というわけだ。

   100ワニは、原作の4コマ漫画完結後、一気にグッズや書籍化が発表され「金に走った」と炎上する事態に陥った。その後、ことあるごとにネット上では面白おかしく扱われるようになった。よしひろ氏は「これはマーケティングのミスだと思います。本当に下手だった」と指摘し、それが映画にまで響いたのは「非常に残念」だと漏らす。

「純粋に作品の出来栄えで評価されるなら、それは仕方がありません。ただ、同作品は、原作にはない部分をオリジナルで作っていて、意外と面白かった。ネットで叩かれるほどの『爆死』ではなかったと思います」
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