東京オリンピック・卓球混合ダブルスの決勝で、中国の「応援団」が現れ、中国選手に大声援を送った。無観客試合のはずなのに――。
水谷隼・伊藤美誠選手のペアが中国の許シン・劉詩ブン選手のペアを破り、金メダルに輝いた2021年7月26日の試合。中継映像を見ると、会場内の座席に中国の国旗を広げ、選手へのエールを送る一団がいた。同日夜の日刊スポーツ(電子版)によると、試合中、中国選手団約40人が「加油(頑張れ)」と叫んでいたとのことだ。
組織的応援は禁止されるのでは
東京五輪で、新型コロナウイルス感染対策について選手やチーム関係者に向け定めたプレーブックによると、「大声を出したり、歓声を上げたり、歌うことは避けましょう。拍手などの飛沫が飛ばない方法で選手の応援をお願いします」と応援方法を定めている。
そもそも無観客にしているのに、「関係者」が大声で応援しては感染対策上好ましくないのは明らかだ。
J-CASTトレンドがスポーツライターの小林信也氏に取材すると、卓球での一件を受けて、今後は大人数で「声を上げて応援することはできないだろうと思います」と推測した。
ただ、他の競技でも試合中の選手自身が声を出したり、監督や観戦中の選手が声援を送ったりする事例がある。今回は組織的な応援で中国が目立ったが、中国に限らず、現場の選手や関係者が声を上げることは東京五輪で「割とありがち」だという。
試合を見ている選手や関係者から思わず声が出てしまうことはあるため、完全にストップするのは難しいと考えられる。そのため、「声出し」をどこまで規制するかは応援の程度によるが、少なくとも「組織的な応援」のような行為は禁止されるのではないか。これが小林氏の見方だ。
また同じような行為が発生した場合、対戦相手のチームがやめさせようと抗議をすれば、応援側も要請に「従うことになると思います」。
審判も空気に流されたか
なぜ今回、中国側による大声での応援は容認されてしまったのか。小林氏は、試合中の選手らが互いに声をかけ合ってプレーしている中で会場が平時のスポーツのような雰囲気となり、審判などもその空気に流されたことで「厳しくとがめるという作用が働かなかった」のではないかと分析した。
本来であれば主審のほか、大会の新型コロナウイルス対策責任者(CLO)が大声での応援について注意する役割を担うという。プレーブックによると、CLOは、オリンピック委員会とパラリンピック委員会が指名し、大会の関係者にプレーブックを遵守させる責任を負っている。
「今後はCLOがきちんと機能するよう、組織委員会は徹底していくのではないでしょうか」(小林氏)