新型コロナウイルスの勢いが増す中でなかで、東京五輪が始まった。緊急事態宣言で、都民には自粛が要請されている。選手たちの行動も「バブル方式」。外部との接触が厳しく規制されている。コロナと五輪が、都民と選手が分断された状況を、まるで「パラレルワールドのようだ」と指摘する声も出ている。
同時に並行して存在する別の世界
「パラレルワールド」とは同時に並行して存在する別の世界のことだ。漫画やアニメ、映画などではしばしば登場する。
五輪は本来、開催地の人たちの積極的な協力によって大いに盛り上がり、選手たちとの絆を深めてスポーツのすばらしさを世界に発信するものだった。ところが2020年初からのコロナ禍でいったん1年延期になり、さらに開催年の今年になってもコロナは収まらない。日本では頼みの綱のワクチン接種が不十分なまま、開催に突入することになった。
こうした状況について、コラムニストの小田嶋隆さんは、すでに今年5月の日経ビジネスの連載で「『ショー・マスト・ゴー・オン』という悪夢」と題し、「なんだかパラレルワールドのできごとみたいだ」「私は夢を見ているのだろうか」と書いている。
5月上旬段階では、緊急事態宣言で映画館などは休業を要請されていた。しかし、聖火リレーやマラソン試走など五輪イベントは敢行されていた。小田嶋さんのコラムはそのことへの違和感をつづったものだが、現在の東京の状況にもすっぽり当てはまる。