新型コロナウイルスの感染者数が急増している韓国で、楽曲の「BPM」(1分間のテンポ数)が関心を集めている。というのは、スポーツジムなどで流す音楽でテンポの速い曲は不可になったからだ。人気ミュージシャンのヒット曲でもBTSはOKだが、PSYはダメと明暗が分かれ、論議を呼んでいる。
テンポ数120が分かれ目
韓国ではいったんコロナが収まっていたが、デルタ株の影響で7月に入って再び増加傾向に。中央防疫対策本部の19日発表によると、13日連続で1日の感染者数が1000人を超えた。感染者の多いソウル首都圏では12日から、4段階の防疫措置のうち最も厳しい段階に移行している。
フィットネスクラブなど屋内体育施設でも規制が強化されている。ダンスやエアロビクスなどの際に流す音楽について、BPM(1分間のテンポ数)が120を超えるリズムの速い曲が禁止されることになった。朝日新聞によると、保健当局は「息が切れる激しい運動で、飛沫(ひまつ)や汗が飛び散るのを防ぐため」と理由を説明しているという。
BTSの大ヒット曲「ダイナマイト」(BPM114)や「Butter」(BPM110)は基準以内だが、PSYの「江南スタイル」は132、SHINeeの「Ring Ding Dong」も125と基準を超えてしまった。
音楽雑誌「ローリングストーン」によると、2018年のビルボードチャート上位5曲にランクインした曲の平均BPMは92.6だったというから、BTSの曲も相当アップテンポだということがわかる。
西日本新聞のソウル電によると、政府に厳しい保守系紙は今回の規制について、「科学的根拠や事実に基づかず、過度に自由を抑圧するどんぶり勘定式な行政判断だ」と批判。保健福祉相は13日、国会答弁で「いくつか指摘があるためもう一度検討する」と語っており、基準を修正する可能性もあるようだ。
PSYとBTSがツーショット
「BPM」は「beats per minute」の略。医学では1分間あたりの脈拍、音楽では1分間あたりの四分音符の数(拍子)を表す。
2012年に発売されたPSYの「江南スタイル」はアップテンポのコミカルな「乗馬ダンス」で一躍大人気になった。BPM 132という数字を知って、納得する人も多いに違いない。ビルボード「HOT100」7週連続で2位。韓国人歌手としては過去最高を記録し、世界中でPSYの振りをまねる動画が大量にアップされた。
7人組男性グループBTSの「ダイナマイト」は、2020年にビルボード初登場1位。最近作の「Butter」も21年7月13日現在、7週目の首位をキープし、今や世界最高のダンス・ボーカルグループとなっている。BPM110台とはいえ、ダンスの動きは激しい。
BTSは今や全世界で空前の人気を誇っており、規制水準を下げて「ダイナマイト」や「Butter」を規制対象にすることは韓国政府にとって難しかったに違いない。
今回、1分間のテンポ数が「120」で区分けされたことで、PSYとBTSは引き裂かれることになったが、両者は個人的には親密なようだ。PSYは2020年9月21日、BTSのメンバーの一人、Vとハグする2ショットをインスタグラムで公開している。二人は誕生日が一日違いなのだという。
韓国の報道によると、BTSは9月25日、6大陸の主要都市を結んで開催されるコロナ禍支援のチャリティーライブに出演する予定だ。