日本の大学の劣化が否定できない
一方で、日本の大学が危うい状況にある、と指摘する本も目立つようになっている。『大学はもう死んでいる? トップユニバーシティーからの問題提起』(集英社新書)もその一つ。
著者の吉見俊哉さんは東京大学大学院情報学環教授。ハーバード大学で教えた経験もある。東大では副学長も務めた。吉見さんは述懐している。
「この30年間で、東京大学は中国の北京大学や清華大学、国立シンガポール大学などのアジアの大学との差を縮められ、追い抜かれていきました。つまり、世界の中での日本の大学ということで言えば、日本の大学の地位は相当沈下してしまったし、内実としても劣化ということは否定できません」
5月22日の朝日新聞は、徳島県の高校から米スタンフォード大学に現役合格した松本杏奈さんを、地方の高校から米国名門に進んだ珍しいケースとして紹介している。松本さんは高2の夏、中国で開かれたノーベル賞受賞者や研究者が集まる「アジアサイエンスキャンプ」に公募で参加。「アメリカの大学に行くよ」と当然のように話す同世代の高校生らに刺激をうけ、海外進学が現実的な目標になったという。