新型コロナウイルスの感染が収まらない。夏に向かうこの時期になってもマスクの着用、手洗いうがい、消毒といった予防は当たり前となった。
こうした対策にもかかわらず、ここ最近、コロナ以外のウイルス性感染症が増加傾向にあるのだ。なぜ流行しているのだろうか。増加している感染症をたどると、ある共通点が浮かんできた。
「プール熱」1年前と比較し3倍以上増
国立感染症研究所は、「5類感染症」の定点把握疾患の報告数を週単位で公開している。5類感染症は、国が調査に基づき国民や医療関係者に情報を公開し、発生と拡大を防止すべき感染症だ。最新の2021年第24週(6月14日~20日)のデータを見てみよう。
まずは、呼吸器感染症のひとつ「RSウイルス感染症」。全国の報告総数は9641件で、定点当たりの報告数は3.05人だった。1年前の2020年第24週(6月8日~6月14日)では、全国の報告総数は22件で、定点当たり0.01人。比較すると、1年で急増していることがわかる。
東京都感染症情報センターの公式サイトによると、RSウイルス感染症は患者の約75%以上を1歳以下の小児が占める。ほとんどが軽い風邪のような症状で済むが、生後数週間~数か月の乳児は肺炎など重症化するケースもある。予防方法は、手洗いやマスクの着用、子どもが普段触れるおもちゃの消毒などだ。
次に、「咽頭結膜熱」。発熱、咽頭炎、眼症状を主とする小児の急性ウイルス性感染症で、「アデノウイルス」の感染によって引き起こされる。飛沫(ひまつ)感染、接触感染のほか、プールでの接触により感染するため「プール熱」とも呼ばれる。21年第24週の報告総数は1363件で、0.43人。一方、20年第24週は報告数403件だ。今年の件数は前年同期比で3倍以上増加している。
RSウイルス感染症もプール熱も、子どもがかかりやすいという共通点がある。
「手足口病」これからピークの恐れ
2021年7月1日付のテレビ新潟(電子版)は、RSウイルス感染症の流行の理由について、新潟大学大学院の菖蒲川由郷特任教授の見解を紹介した。菖蒲川氏は、去年新型コロナの対策を徹底していたことや、保育園が休園したことなどがこの1年の感染者数の増減に影響しているとみている。
昨年0歳や1歳だった子が、感染対策や休園によってウイルスに感染せず、免疫をもたないまま1年を過ごした。保育園が再開している今年、新生児と合わせると「RSウイルスに弱いというか、かかりやすい子がいっぱいいることになる。それで一気に感染が広がっている、数も増えてしまっているということだと思います」とした。
プール熱はどうか。昨年はプールを中止していたが、今年は再開した幼稚園や学校が多い。感染が広がる機会が増えたのだろうか。
J-CASTトレンドは、幼稚園勤務の女性に取材した。女性が勤める園でも、今年はプールを再開している。「プールや外遊びの際は、熱中症対策もありマスクを外します。夏はどうしても感染症対策が甘くなる部分があるかもしれません」と話した。
ほかに子どもがかかりやすい感染症に「手足口病」がある。21年第24週のデータを見てみると、報告数は382件だ。20年の同週は406件。一方で、コロナ流行前の19年24週の報告数は1万2707件だった。コロナ対策のおかげか激減しているが、厚生労働省によると毎年7月下旬に流行のピークを迎える。最近では熊本、高知、鹿児島を中心に増加傾向にあり、今後、注意が必要だ。