東京2020オリンピックは、真夏の大会になる。暑さ対策として、2018年から2020年にかけては「打ち水」を活用していくという方針のほか、「アサガオ」の植え込みが導入されたと報じられていた。
すでに2021年7月23日からの開催は目前だが、果たしてこれらの対策は実施されるのか。
小池都知事が呼びかけた「打ち水」
2018年7月24日付日刊スポーツ(電子版)によると、小池百合子都知事は千代田区で行われた打ち水イベントの中で五輪・パラリンピックに向けた暑さ対策の一環で打ち水を活用する意向を示し、来場者に協力を呼びかけた。
19年7月25日付のスポニチアネックスによると、五輪のテスト大会ではアサガオが導入され、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の中村英正氏は「視覚的にも涼しくということから、今回暑さ対策の一環として導入した」と説明したという。
いずれもインターネットの掲示板やツイッター上では少し変わった暑さ対策として話題となった。
競技会場周辺での暑さ対策については、「東京2020大会における都市オペレーションセンター運営計画(第二版)」という資料に取り組みが記載されている。都公式サイトで閲覧可能だ。それによれば、会場周辺の沿道には休憩所を設け、日除けのためのテントや送風機、給水設備も用意する。また、希望するボランティアには日差しを遮る帽子として「かぶるタイプの傘」も貸与する。ただ、「打ち水」の記述は見当たらない。
東京都環境局の環境都市づくり課に取材すると、東京都では涼をとれる手段として「打ち水」の普及に取り組んできた。これは東京五輪にのみ向けたキャンペーンではなく、あくまで一般的な暑さ対策の手段として現在も普及を図っているという。6月24日にも、環境局サイトでは「暑い夏を自宅で涼やかに過ごすために、お家での打ち水をおすすめします」と呼びかけている。
やっぱりアサガオを活用
会場内での暑さ対策については、東京2020大会公式サイトに2021年5月26日付で掲載されている「第45回理事会資料」に内容が記載されている。運営中の適切な休憩の促進や、観客へのうちわの配布などのほか、暑さ対策として「朝顔(アサガオ)」の記述もある。
植物による暑さ対策の効果について、日比谷花壇大船フラワーセンター(神奈川県鎌倉市)の榎本浩園長に取材した。一般的に、建物の面を覆うような「壁面緑化」や植物をカーテン状に設置する「緑のカーテン」であれば、直射日光を避けられるとともに、風通しの良い部分を作ることで建物の温度を下げるといった効果が期待できる。また、ミスト(霧吹き)や打ち水を用いれば、植物の蒸散作用により周辺の温度低下もねらえる。
一方で、緑のカーテンの形成や打ち水などをせずに単に植え込みを設置する場合に温度を下げる効果があるかについては疑問を呈した。ただ、アサガオは比較的温度の低い夏の早朝から花が咲く印象があることから、「涼しげなイメージ」を持つ植物ではあるとのことだ。
組織委員会の戦略広報課に聞くと、大会中には「フラワーレーンプロジェクト」が実施されるという。全競技会場の入り口を花で彩り、観客をもてなす。組織委サイトによると、観客の列を作るためのフェンスの代わりに、小学生らが育てたアサガオなどを競技会場入口に設置する。
戦略広報課の担当者は「多くの子供達が大会に関わることにより大会全体の盛り上がりに寄与するほか、涼しげなアサガオ等の設置には視覚的な暑さ対策上の効果を期待しております」と説明した。19年にも話題になった時と変わらずアサガオを活用し、視覚的な暑さ対策効果をねらうようだ。