心を整える くどうれいんさんは「雨に打たれてずぶ濡れになれ」と

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手荒い気分転換

   くどうさんは盛岡市在住。このほど『氷柱(つらら)の声』が芥川賞候補となったことで、改めて注目された。短歌や俳句は工藤玲音の本名で手がける。

   ananの特集の副題は「心地よく、ハッピーなココロの整え方」。コロナ禍でストレスがたまり、心がささくれ立つ日々に健やかな暮らし方を提案している。

   「最低の時は雨に濡れろ」というメッセージは、筆者の言葉を借りれば「深いプールに潜り底を触るように、人生のどん底に指先で触れる。そうしてからでないと、水面に浮かび上がることができないこともある」という理屈である。「可哀そうな自分をココアで温めるよりも、可哀そうな自分の可哀そうな手触りを味わうのが好きなのだ」と。

   毒(ずぶ濡れ)をもって毒(悲観や苦悩)を制す。少し手荒い気分転換である。精神的デトックスの、ひとつの手法には違いないだろう。

   「飛沫あふれる情熱的な日々」といった表現には、短詩から文芸に入った人らしく、ことば本来の瞬発力に任せるような潔さを感じる。

   少女時代はいろいろ言われたそうだが、一度聞いたら忘れられない名はプロの書き手として強みである。7月14日、芥川賞の選考会が待ち遠しい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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