ジェンナーもすぐには認められなかった
ワクチンの生みの親は英国の医者、エドワード・ジェンナー(1749~1823)。今から200年余り前、「種痘」による天然痘の予防法を発見した。天然痘は人類の10分の1を殺してきたともいわれ厄介な感染症だが、1980年、ついに制圧された。種痘で命を助かった人類は累計10億人以上とも言われる。
ところがこのジェンナーの種痘も、効果が確認されるまでの道のりは平たんではなかった。『感染症とたたかった科学者たち』(岩崎書店)によると、ジェンナーは着想を得てから実験や試行錯誤を繰り返し、成功するまでに約30年もかかった。そして権威あるイギリス王立協会に論文を提出したが、「この論文はあなたのこれまでの科学上の名誉を傷つけることになる」と相手にされず、自費出版で自説を書き残したという。
今回のコロナワクチンは、従来のワクチンに比べると、きわめて短期間で承認された。しかも「mRNAワクチン」などという新しい方式が主流だ。そのあたりも、誤情報や不安を生む一因になっているようだ。